アメリカ、サンフランシスコ。街自体が美術館のような場所で、ヒッピー文化を育んだ背景を感じる。
サンフランシスコは、ロサンゼルスに比べると美術館の類が少ないような気がする。ロサンゼルスのように広大ではないというのもあるが、「サンフランシスコに美術鑑賞に来ました」というのはないような気がする。そもそも、今となっては土地も高いので、ギャラリーを出すのも困難というのもあるだろう。あるいは、もともとカウンターカルチャーの発祥地でもあり、また、美しい景観も考えると、街自体が美術館という見方ができることも関係しているのかもしれない。

さて、ここで紹介するデ・ヤング美術館だが、サンフランシスコのゴールデンゲートパークの中にある。北に数キロ程行くとゴールデンゲートブリッジ(金門橋)、東に1キロ程行くと、ヒッピー文化の聖地であるハイト・アシュベリー(Haight Ashbury)という、ずいぶん贅沢な場所に位置している。

美術館は、広大な公園の中にある巨大な建物。向かいにある、カリフォルニア科学アカデミーも、巨大な建物だ。美術館の展示物は、現代美術館的要素に加え、博物館的要素もある。一番印象に残ったのは、二階に展示されているフォークアート系の作品で、その作品の多さと珍しさに目を奪われ、同じところを何周かした。アフリカの変わった彫像、仮面、オブジェを展示している。この手のものは、他ではなかなかお目にかかれない。



美術系はアメリカ作家の作品が中心のようだ。2024年に訪問した時のコレクション展には、Ed Rusha、O‘Keef、Edward Hopper(Portrait of Orleans)、Warholが展示されていた。個人的には、Ed Rushaの作品が目を引いた。


この美術館の特長として挙げられるのは、写真、ファッションに関する展示が行われることだろう。2017年に訪れた時に開催されていた企画展「The summer of Love Experience, Art, Fashion and Rock & Roll」は、60年代のカウンターカルチャーの展示で、当時の様子を伝える写真、衣装の展示があったし、2024年に訪問した際は「Fashioning San Francisco: A Century of Style」という企画展が行われ、ファッションの展示が行われていた。ちなみにこの展示には、日本デザイナーの衣装が展示されていた(Ninomiya Kei、Yamamoto Yoji、Miyake Issei)。





また、2024年に訪問した時に2階の奥のAmerican Art の展示室でこのような出来事があった。
展示室を歩いていると、女性が私の前にやってきて立ち止まり、「I can give you the Song Gift」と言う。私は、不思議に思い少し悩んでから「It is okay」と言うと、その女性はその場を後にする。しばらくして、奥の部屋で音楽が流れ始める。その部屋に足を運ぶと、先ほどの女性が展示室の中央に立っている。5mほど離れたところに椅子があり、そこに年輩の女性が座っている。その人がSong Giftを受けるということだ。そして女性の歌が始まる。オペラと言った方がいいだろう。非常に綺麗な声で驚かされた。3分程歌っていた。素晴らしいアトラクションだ。

ちなみに、思い起こすと、2017年訪問時も、同様に歌を耳にした記憶があるので、定常的に行われているのかもしれない。もし、声を掛けられた場合には、私のように断らず、素晴らしいSong Giftを受け取っていただきたい。
尚、この建物には、展望台がある。サンフランシスコの北と西側の街並みが見られる貴重なビューポイントなので、足を運んでもらえればと思う。レセプション脇に奥へ向かう通路があり、突き当たると、そこから展望台に向かうエレベーターがあるので、見逃さないでいただきたい。



また、一階にあるセルフサービスのカフェは、地元の人が集まるリラックスできる空間だった。インテリアやデザインに拘っている訳ではないが、洒落た雰囲気が漂う素敵な空間で、地元の雰囲気を感じることができる貴重な場所だ。
2016年、2017年、2024年訪問
基本情報
■ 名称:デ・ヤング美術館
■ 住所 : 50 Hagiwara Tea Garden Dr, San Francisco, CA 94118, USA
■ ホームページ:https://deyoung.famsf.org/
(described on Feb 10 2019)
(latest update on Jan 26 2025)