アロス・オーフス美術館 (Aarhus, Denmark)

デンマーク、首都のコペンハーゲンから電車で3時間。地方都市とは思えない規模の現代美術館に感嘆し、インスタレーションの恒久展示エリアで動けなくなる。

デンマークのオーフスにある近代・現代美術館。オーフスはデンマーク第2の都市だが、首都コペンハーゲンから電車で3時間程度。デンマークの地方都市にあるとは思えない大規模な美術館だ。

電車のオーフス中央駅から徒歩で10分の場所に大きな建物が現れる。建物は10階建て。4階に入口があるが、地上から4階までは緩やかな階段を上り建物に入る。中に入ると左手にミュージアムショップ、奥に受付、受付横には立派なレストランとカフェエリアがある。

展示室は、0、1、3、5、6、8、10階。8階と9階には、おそらく特別な催しなどで使われるラウンジとレストランがある。建物は10階建てと高いため、各フロアの面積が限定された高層建築を想像してしまうが、各フロアはそれなりに広い。また、私が訪問した時は、企画展が7つ行われていた。この規模はあまり見たことがない。

10階は屋上に位置し、この美術館を有名にしている円形のカラーリングされた歩道がある。虹色を想起させる外が見える円形の歩道からは、アーフスの街が見渡せ、海が視界に入る。

各階の移動は、エレベーターと螺旋階段。10階のカラーリングされた歩道のすぐ下の9階までは吹き抜けになっていて、螺旋階段は0階から9階まで続いている。あまり見たことがない空間で、爽快だ。

展示室は、吹き抜けの横になる。各階のスペースは極端に広い訳ではないが、カクカクしている訳でもなくいい感じだった。特に6階に展示されていた現代美術作品の質の高さが印象的だった。カウボーイが不思議な動きをする映像。ラスベガスの看板の作品、ホームレスが持っているプラカードの展示、アメリカ・メキシコ国境の壁に関するビデオ、そして最後に巨大な男性のフィギュァ。

巨大男性フィギュアの作品は、4m四方の箱に入る感じの大きさ、このフィギュアはオーストラリア先住民であるアボリジアをイメージしたらしい。アーティストはRon Mueckというオーストラリア人。この人の同様のフィギュア作品は、十和田市現代美術館にも展示されている。中年女性の巨大フィギュアで、Standing Womanという作品だ。いずれもインパクト充分だ。

そして、一番素晴らしかったのは、0階のインスタレーションのエリア。部屋が独立していて一部屋に1作品が展示されている。展示としては恒久展示とのことだが、私が訪れた時は8作品が展示されていた。すなわち8つの独立した部屋が配置されていた。

個人的な好みになってしまうが、森万里子のトムナンフーリとジェームス・タレルの光の作品が印象的。森万里子のトムナンフーリのオリジナル作品は、瀬戸内海の豊島の池に建立されているが、この作品を鑑賞して印象に残った方は、是非、豊島のオリジナルを訪問して欲しい。

また、ストームハウスという作品は、日本の家屋の空間に嵐が発生する光景を再現する作品だった。これも、上述の森万里子と同様、瀬戸内海の豊島に作品があったが、この美術館は、この二つの作品を運営している「ベネッセアートサイト直島」と何か関係があるのかもしれない。

個人的には、独立した小さな部屋を配置し、一つの作品だけを展示する形式は鑑賞者の感覚を刺激する効果があるような気がするのだが、この0階の展示スペースを見にくるだけでも訪れる価値があるような気がした。

最後に一つトイレについて書きたいと思う。この美術館の一番大きなトイレは受付、レストラン、ショップがある4階にあるのだが、男女兼用となっていた。男性小用の便器はなく、すべて個室で、男女でスペースが分かれていなかった。この形式は、デンマーク、スウェーデンで何か所か目にしたが、このあたりが、男女平等(ジェンダーフリー)に対する意識の高さの表れなのかもしれない。

アクセスは不便だが、時間を掛けても訪れる価値がある、驚きをもたらしてくれる素晴らしい美術館だ。是非、訪れて欲しい。

2024年訪問。

基本情報

​■ 名称 : アロス・オーフス美術館
■ 住所 : Aros Allé 2, 8000 Aarhus, Denmark
​■ ホームページ:https://www.aros.dk/da/
■ その他
・オーフスは、コペンハーゲンから電車で3時間。コペンハーゲンからの日帰りも可能。美術館は広いので、カフェ・レストランでの昼食を考えると、滞在時間として3時間は確保したい。尚、オーフス駅から美術館までは歩いて10分程度。ただし、冬は雪道の場合があり、美術館手前が上り坂なので、時間には余裕をみておく必要有り(雪道は凍結して危険なので注意が必要。著者は行き・帰り同じ場所で転んでいます)。
・コペンハーゲンとの間の電車は、スケジュール通りには走らないのでこの点も想定しておく必要があります(著者の場合、行きは15分遅れて到着。帰りは予約していた電車がキャンセルになり、振替えれらた電車は40分遅れてコペンハーゲンに到着しました)。
・電車は、行き・帰りともに満員でした。チケット購入と席の事前予約は必須。