カナダ東部、オタワ。厳冬の地で、モダンかつ巨大な美術館で、美術館における空間の重要性を認識する。
カナダ、オタワにある国立美術館。個人的には、国立美術館はたいていしっくりこない。国立美術館と言うと、展示室が、中世当たりの作者不明の作品で占拠されている印象があるからだ。展示室に入ると、肖像画、宗教画が、壁を覆いつくし、何を見ていいのか、この絵を見て楽しい、素晴らしいと思う人が存在することが理解できなかったりする。もう少し年月を経れば分かるようになるのかもしれないが、残念ながら、その兆候は見られない。
この国立美術館にも、当然古い絵画が並べられていた。但し、現代芸術、コンテンポラリー系の作品も多く展示されていた。普通は、現代系絵画と言っても、ピカソ、ミロ、ダリあたりの、1900年代の中頃までだったりするが、この美術館には、コンテンポラリー系の作品が数多く見られ、他の国立系美術館とは、作品に対する考え方が異なるように見えた。
この美術館で驚かされたのは、そのモダンかつ巨大な建築だった。現在の建物は1988年に完成したものということであり、館内に入ると、ガラス張りの屋根まで吹き抜けの空間を目にし、開放感に浸れる。世界には数々の巨大美術館があるが、これだけの空間を持つ美術館は、あまり記憶にない。これこそ、巨額のコスト投資が許される可能性が高い国立美術館にしかできないことだという気もする。
館内にある個別の展示室も天井が高く、長居をしたくなる場所が随所に見られる。個人的に印象に残った場所は、吹き抜けで、四方が白壁に囲まれた場所の中央に、欧州、はたまた、中近東を想起させるような水場がある場所。館内を一通り歩いたあと、戻って来ては、その誰もいない贅沢な空間を楽しんだ。
また、火星かどこか、他の惑星の映像を作り出し、巨大なスクリーンに映し出した作品も印象に残った。作品は、一般的に著名な作品というよりも、あまり目にしたことがない作家・作風のものが展示されており、非常に新鮮。アメリカにある現代系美術館というよりは、欧州の現代美術館的趣向かもしれない。
期待していなかったこともあり、予想以上のレベルの高さに驚かされた。常設されているレストラン・カフェも、欧州的な雰囲気を持った洒落た場所であり、一日居ても飽きないだろう。尚、私が訪れたのは12月だったが、最高気温が0度程度で、その寒さには閉口した。できれば、冬に訪れるのは避けた方が良さそうだ。
2014 年訪問。
基本情報
■ 名称:National Gallery of Canada
■ 住所 : 380 Sussex Dr, Ottawa, ON K1N 9N4, Canada
■ ホームページ:https://www.gallery.ca/
(described on Feb 10 2019)
(latest update on May 2 2020)