アメリカ、ユタ州の国道沿い。渓谷脇に建てられたコーヒーハウスで、窓外の素晴らしい景観を眺めながら、贅沢な読書の時間を過ごす。
アメリカ、ユタ州にあるコーヒーハウス。コーヒーハウスと言っても、街中にあるカフェではない。ユタ州南部、景観が飛び抜けている国道12号線沿い、及び、渓谷沿いにあるカフェだ。周りには何もない。このコーヒーハウス以外には、本当に何もない。
初めて、このコーヒーハウスを見かけたのは、2009年、キャピトルリーフ国立公園からラスベガスへ向かって車を走らせていた時。休憩でも取ろうと思い、この場所を見つけたのだが、運悪く、休日の火曜日にあたり、中に入ることができなかった。その時は、窓越しに店内を覗き、今度は、火曜日ではないスケジュールを組んで、必ず戻って来ようと誓っていた場所である。
このカフェは、渓谷脇の岩地に建てられたログハウスだ。ログハウスとは言っても相当大きい。店内には四人掛けのテーブルが10程度並んでいて、テーブル横の窓からは渓谷が見える。ユタ特有の茶系の地層状になった岩山が見え、それは、ザ・ウェイブがあるノースコヨーテビュートで目にする景色に似ている。
初めて店内に入ったとき、私たち以外の客は、外のテーブルに家族連れが一組いるだけだった。店内に誰もいなかったこともあるが、テーブルに着いて、店内を見渡し、窓外の景色を眺めたとき、しばらく、このようなカフェが存在することが信じられなかった。それぐらい、素晴らしい、贅沢な空間だ。
店内には、この店の歴史が書かれた掲示があったが、それによると、1990年代の初頭に、この建物が考案され、丸太などの部材を運び込み1998年に完成。このコーヒーハウスをオープンさせたとあり、「ドライブ途中の人に、ここから見える素晴らしい景観を楽しんでもらいたいという思いがあった」という主旨の記載が見られた。ちなみに、この建物を建てた方は、コーヒーハウスを開業した時、87才だった。
店内はセルフサービスで、私が最初に訪れたとき、店の人は、厨房の中の人も含め三人程いるようだったが、一人は、昔のドレス風の衣装を着けていた。テーブルに着いてサンドイッチを食し、コーヒーを飲みながら、持っていた本を取り出し読書をした。時々、顔を上げ、店内を見渡し、幸せな気分になり、窓外を眺め、自分が居る場所がわからなくなるほどだった。二時間程、滞在していただろうか、このユタ州の辺鄙な場所に、この建物を築いた人の熱意が分かるような気がした。
尚、最初の滞在から数日後、この場所をもう一度、訪れたい衝動に駆られ、キャピトルリーフ国立公園近くに滞在していた場所から、片道一時間と少し掛けて、この場所を再訪した。最初の訪問から二日後の話だったが、店員の女性は私たちのことを覚えてくれていた。少し話をしたところ、「最近、TVクルーが撮影に来ていて忙しかったの、お客さんにもインタビューしたのよ」ということだった。「それでは、TVで、自分が映っているのが見られますね?」と言ったら、「私の家にはテレビがないの」と彼女は言いながら笑っていた。
レストランやカフェは、いろいろ見てきたが、これだけの景観に恵まれた場所は記憶にない。このカフェの横を走る国道12号線は、アメリカでも景観が良い屈指の道路として知られているということもあり、ある程度の人は訪れるのだろうが、それにしても、この場所に、この建物を造ってしまう熱意には敬服するしかない。また、タイミングによっては、混雑することもあるのかもしれないが、時間をずらせば、贅沢な空間を独り占めできる。
何回でも戻ってきたくなる場所であり、是非、末永く営業を続けて欲しいと思う。
ちなみに、このカフェの建物の少し下には、このカフェが経営するコテージが二部屋存在する。機会があれば、是非、宿泊してみたいと思う。
2009年、2015年訪問。
基本情報
■ 名称:キバ・コーヒーハウス / Kiva Koffee House
■ 住所 : 7386 Hwy 12 Mile Marker, Escalante, UT 84726, USA
■ ホームページ:http://kivakoffeehouse.com/
(described on Jul 13 2019)