大原美術館(Kurashiki, Okayama, Japan)_荘厳な空間に充実感を覚える

岡山県、倉敷。1930年設立、日本初の西洋画美術館。歴史を感じる建物と空間に並ぶ近代美術作品を目にし、他の美術館では感じない充実感に包まれる。

関西方面の美術館が紹介されるとき、必ず含まれる美術館だ。一つの理由は、西洋・近代美術を扱う日本初の美術館であるためだ。開館は1930年、第二次大戦前だ。

場所は、岡山県、倉敷市。「重要伝統的建造物群保存地区」として登録されている「倉敷美観地区」に位置している。倉敷川沿いに広がる屋敷・蔵が並ぶ風情あるエリアの中心に位置するこの大原美術館は、この地区を訪れた観光客が足を運ぶ可能性があるという意味で、立地的にも恵まれている。

大原美術館
倉敷美観地区
大原美術館
倉敷美観地区

美術館の前は、この倉敷美観地区の景観の象徴である倉敷川が流れている。美術館敷地前に立つ。石造りのゲート越しに見える建物はギリシャ神殿をモチーフにしたように見える。開館の年の1930年は昭和初期であり、この当時におけるこの建造物は特異に映ったに違いない。

倉敷美観地区
大原美術館
倉敷美観地区

敷地内に入ると右手にチケット売り場があり、チケットを購入し、欧州風建築物である本館に入る。本館は1階と2階。いずれも、この美術館の所蔵作品のハイライトとなる作品が展示されている。主要作家を挙げると、モネ、マティス、ゴーギャン、ピカソ、セザンヌあたり。1800年代後半から1900年代半ばぐらいまでだ。西洋のアーティストが多いが、1900年代前半に活躍した日本人アーティスト、藤田嗣治、岸田劉生、青木繁の作品も展示されていた。

個人的には、本館2階の出入口の壁の上にあったベルギー人「フレデリック」の「万有は死に帰すけれど、神の愛は万有をして蘇らしめん」という、おそらく壁に直接書かれていた作品のスケールの大きさが印象に残った。壁の端から端まで描かれていたので10m程度あったと思う。

本館の奥は、おそらく開館以降に増築された建物が続いており、出口手前あたりには、現代美術作品も展示されていた。私が訪れた時は、草間彌生、鴻池朋子が展示されていたが、ショップにあった美術館の作品集を見ると、ウォーホル、リヒテンシュタインあたりも所蔵しているようだ。

本館を出ると、工芸、東洋館へ。日本の版画っぽい作品が並び、奥には仏像が並んでいた。年表には中国へ買い付けにいったという記述もあったため、買い付けを行ったのだろう。この別館となる建物は、外観は蔵のような形状になっており、館内も雰囲気がある空間だった。

大原美術館
倉敷美観地区
大原美術館
倉敷美観地区

本館には、この美術館の歴史の説明が書かれている展示がある。この展示を見ていると、作品を購入するために欧州まで船で1カ月かかったようなことが書かれていた。当時、この美術館を設立し運営することが、いかに難しかったのかが想像できる。

本館は、開館からほぼ100年が経過していることもあり、非常に古いが、この美術館の歴史を頭に入れたためなのか、館内が厳かな雰囲気に覆われていることを感じ、一通り鑑賞した後、他の美術館にはない充実感を覚えた。

大原美術館
倉敷美観地区

今では、多くの新しい美術館が存在するが、この大原美術館のように歴史ある美術館にも足を運び、歴史の重みのようなものを感じていただきたい。

2025年訪問

基本情報

■ 名称:大原美術館
■ 住所 : 岡山県倉敷市中央 1-1-15 
​■ ホームページ:https://www.ohara.or.jp/
■ その他
  ・館内の写真撮影は禁止でした。