アメリカ、カリフォルニア南東部。荒野に点在するゴーストタウンを彷徨い、「無」の世界を体感する。
カリフォルニア州南東部にある砂漠。名称はDesertなので砂漠と訳してしまうが、砂地がある訳ではないので、正確には「荒野」という言い方が適切だ。場所はロサンゼルスから国道10号で東に50km程度走り、北へ向かう国道15号に乗り換えたあたりから、ネバダ州に入ったあたりのエリア一帯を指す。モハベという名称が使われているモハベを象徴する場所は、国道15号にあるベイカーという町の東に広がるモハベ国立保護区で、このエリアにはゴーストタウンが存在する。
この場所が特筆するのは何もないこと。「無」が広がる世界ということだ。この手の場所はアメリカ西部には多々あるが、車でアクセスできるメリットは大きい。基本は何もない荒野だが、保護区の北側にはジョシュアツリー(Joshua Tree)の生息する場所があり、南にはケルソデューンという砂丘もある。尚、ジョシュアツリーについては、この保護地区から160Km程南にあるジョシュアツリー国立公園よりも、規模、質ともに優れた樹々が生息している。
基本は「無」の世界だが、所々にアクセントとなる場所が存在する。以下、このモハベ国立保護区に点在する、場所について記載する。
ケルソ(Kelso)
ベイカーから60Km、40分。ベイカーから続く道路は、ほとんど車とすれ違わない。荒野が続く中、このケルソという町が遠くに見えてくると感動する。この場所だけ樹々が密集し、水を貯める背の高いタンクが見え、人が住んでいることがわかるためかもしれない。この場所には欧州風建造物の駅舎が建っている。ここは鉄道の駅として機能しているのだ。この欧州風建造物はこの荒野には少し不釣り合いな感じがするが、このミスマッチがいい味を出している。
この建造物は、現在モハベ国立保護区のビジターセンタとして使われている。最初に訪れた1994年は建造物は放置状態で、建物の脇に簡易トイレが二つ立っているだけの場所だった。現在は公衆トイレが設置され、また、建物の中にはこの保護地区に関する展示もあり立派に機能している。建造物の横は線路が走り、道路が横切る踏切、線路とその周辺にある建物を臨む景色が素晴らしい。1994年に訪れた時には、存在していた簡易トイレに落書きがあった。
「This Town is going to be used for processing illegal Chinese immigrants」
レベルの高いアメリカンジョークだ。
ケルソ砂丘(Kelso Dune)
ケルソの町から車で南へ20分程走った場所にある砂丘。この場所はケルソの町からも遠くに見ることができるが、正体不明の場所に映る。車を走らせると、次第に右手に見えるこの場所が砂丘らしいことがわかってくる。この荒野の中に、なぜ、このような砂丘があるのだろう。不思議な空間だ。
砂丘へはトレイルがある。ケルソの町を南に下って10分程走ったところで右手に入る未舗装道路があり、10分程走ると砂丘に向かうトレイルの入口に到着する。人は少ないが、まったくいない訳ではなく、トレッキングをしている人も目にする。砂丘の上までは歩いて20-30分程度かかる。麓からは100m以上の高さがあるが、頂上付近から見下ろす東側に広がる荒野は、芸術作品を見ているような美しさだ。
サイマ(Cima)
ケルソの町から北東へ延びるサイマロードを20分程走ったところにあるゴーストタウン。道路脇にジェネラルストアだった建物跡がある。営業はしていないが、最初にこの横を通った1990年代は、営業していたような気がする。2002年に訪問した時の記録では、ジェネラルストアに併設されていた郵便局は営業していた。Cima Storeと書かれた看板が道路脇にあり絵になる。尚、この場所は、南を走る国道40号から来た人がケルソ経由ラスベガスへ抜ける近道なので意外と車が走っている。
イヴァンパー(Ivanpah)
サイマから北へ走り、交差したイヴァンパ―ロードを右折し、10分程走ったところにあるゴーストタウン。町があったと思われる場所から周辺を見渡すが建物は二軒ほどだった。誰も住んでいない様子。ここまで来ると誰もいない。奥に進むと未舗装道路になり、また、山道のような感じになる。しばらく走ったところにバンダービルト(Vanderbilt)というゴーストタウンがあるが、イヴァンパー以上に何もない。
尚、冒頭に記載したサイマから北へ走り、イヴァンパ―ロードに交差した場所からこのイヴァンパーを臨む道路は絶景。直線道路で、道路が丘に吸い込まれていく景色を見ることができる。
ニプトン(Nipton)
サイマから北へ走り、交差したイヴァンパーロードを左折。10分程走ると国道64号線に突き当たるので、そこを右折。10分弱走ったところにある町。営業を続けているジェネラルストア、レストラン、ホテルがある。小さな集落とも言える。集落の横を線路が走り、その線路にかかる踏切とその先に見える荒野が絶景。
ホワイト・クロス第一次世界大戦メモリアル
サイマから北北西に10Kmの地点、道路脇に第一次世界大戦の戦没者追悼碑がある。サンライズロックと呼ばれる岩の上に十字架が建てられている。周りには誰もいない静寂の地。この場所の周辺にはジョシュアツリーが生息している。ジョシュアツリー国立公園よりも、繁殖数は多く、絵になる景色を随所に見ることができる。ジョシュアツリーを見に行くのであれば、こちらに来た方がいいと思う。
上述の場所は、ケルソ砂丘へのトレッキングを行わなければ、一日で廻ることは十分可能だ。飲食ができるのはケルソのビジターセンタ内でスナック類が販売されているのと、ニプトンにあるジェネラルストアになる。ちなみに、私はニプトンを三度訪れたが、ニプトンのレストランはいずれも開いていなかったので期待しない方がいいと思う。
これらの場所は、「無」と「非日常空間」を体感できる貴重な場所だ。是非、徘徊し、頭の中を「無」にしていただきたい。
1994以降、複数回訪問。最後に訪問したのは2018年。
基本情報
■ 名称 : モハベ砂漠・モハベ国立保護区
■ ホームページ: https://www.nps.gov/moja/index.htm (Mojave National Preserve)
(described on Aug 29 2021)