アメリカ西部、モハベ砂漠の荒野。印象的なカフェ&モーテルサインを背景に、人のいない静寂を眺め、癒される。
アメリカ、カリフォルニア州の南、ルート66沿いにある町。周りは荒野。非日常空間。一番近い大きな町まで100㎞程度。住んでいる人も限られているためゴーストタウンとも理解されているが、唯一ある店も営業を続けており、そういう意味ではゴーストタウンという言い方は適切ではない。個人的には、この場所は十回弱訪れているが、何度でも戻ってきたくなる特別な場所だ。ちなみに、この場所を切っ掛けに私はこの周辺の荒野を徘徊するようになった。
最初に訪れたのは1995年。この場所を訪れるためではなく、隣にあったバグダット(Bagdad)という場所を探して西から車を走らせたところ、その目的の場所を知らないうちに通り過ぎこのアンボイに到着したというのが経緯である。その立ち止まったときに見た町の風景が、今まで見たことがない景色であり目に焼き付いてしまった。
この場所を有名にしているのは、町の中央にあるRoy’s Motel&Cafeだ。ルート66沿いに配されたCafeは、赤い文字で「CAFE」とだけ書かれた看板がトレードマークであり、モーテルはルート66沿いに独立した小屋が六つ並んでいる。小屋の前には、この町の一番の象徴であるRoy’s Motel&Cafeの大型看板があり、この看板を背景にした景色は広告で見かけることがある。また、この場所は映画のロケ地としても使われ、有名なところでは、The Hitcher (1986)、Kalifornia (1993)がある。
1995年に初めて訪れたとき、カフェはレストランとして営業をしていた。また、モーテルも営業を行っており、私は1995年、二回目の訪問時に道路沿いに6つ並んだモーテルの小屋の一つに宿泊している。1995年当時、カフェの店員の方は来客に対して不信感を持っているようだった。映画などの影響なのか、どうやらこの場所は多くの若者が興味本位で訪れる場所だったようでマナーの悪い訪問者が数多くいたようである。
当時は、私も不信感を持って接客されたが、1995年の二度目の訪問時に日が暮れ、Motel&Cafeのネオンサインが消えてから町に到着し、既に閉店していたカフェを訪れ、たまたま中にいた店員の人に「モーテルに宿泊したい」ということをお願いしたところ「あんたは、悪そうな人には見えないから泊まっていいよ」と言われ、宿泊することができている。その店員は次の日の朝食の時に声を掛けてきてくれ話に付き合ってくれた。いい思い出だ。
その後、モーテルは閉店しカフェもレストランとしての機能は果たしていない。一時期はカフェも閉店していたが、2018年に訪れた際には簡単なスナック・ドリンク・おみやげを販売していた。店の人によるとレストラン営業も視野には入れているが、水回りが改善できないため営業できないということだった。住民は現在四人。鉄道関係者が二人、町のメンテをする人が二人ということだった。
この場所は本当に静かだ。時々、通りすがりの人が町を訪れカフェの周辺に車を止めて歩き回るが、基本的には誰もいない。今は使われていないモーテルの事務所前に座ってぼんやりと町の風景を眺めていると、とにかく癒される。印象的な町の風景を背景に物音一つ聞こえない空間に身を置くと頭の中がリセットできるような気がする。そのリセット中に遠くから車のエンジン音が聞こえてきて目の前の道路を走り去っていくというのも、いい感じのアクセントになって心地良い。
場所は不便だが、ロサンゼルスから車でラスベガスへ向かう途中にでも立ち寄ってもらえればと思う。
最後にこのアンボイから南に延びているアンボイロード(Amboy Road)の映像を紹介するので、周辺エリアの雰囲気を感じ取っていただければと思う。
1995年(二回)、1998年、2002年、2005年、2010年、2018年(三回)訪問。
基本情報
■ 名称:アメリカ、カリフォルニア州、アンボイ
■ ホームページ:https://en.wikipedia.org/wiki/Amboy,_California
■行き方・その他
- ロサンゼルスかラスベガスから車でのアクセスになる。町の近くにあるインターステートは40号線。ロサンゼルスからラスベガスへ車で行く場合には15号線を通るので、ラスベガスへ向かう途中で立ち寄る場合、少し迂回する形になる。
- 日本からロサンゼルスに入りラスベガスへ向かう人は、飛行機は使わず車で入ることをお勧めする。このロサンゼルスとラスベガスの間に広がる荒野はアメリカ西部を実感できる特別な場所だ。
- ロサンゼルスからラスベガスヘは、15号線と40号線の間に位置する「モハベ国立保護区」を横切る形で移動することもお勧めする。この場所には、景観に優れた場所、ゴーストタウンがあり穴場的な場所。
- 距離・時間
・ロサンゼルスから200マイル/320㎞、車で4時間。
・ラスベガスから150マイル/240㎞、車で2時間半。
周辺の見どころ
ブリストル・レイク / Bristol Lake
アンボイ前のルート66を西へ1km走ったところに南へ延びる道路・アンボイロードがある。この道路の両側に広がるドライレイクがブリストル・レイクだ。ドライレイクなので水場はないが、ルート66から南に10kmほど行くと、このドライレイクから採れる塩化カルシウムを精製している場所があり、近くにエメラルド色の水面が張られた場所を見ることができる。
このブリストル・レイクは、乾いた泥が一面に広がる場所だが、この場所だけドライレイクに溝状に掘られた場所があり、水が張られている光景を目にすることができる。その水面の色は、イエローストーン国立公園の温泉プールに見られる色と同じで、この何もない場所に存在することに驚かされる。
アンボイ・クレーター / Amboy Crater
アンボイ前のルート66を西へ4km走ったところから内陸に3kmほど歩いたところにあるクレーター。休眠火山の噴火口だ。この場所は、National Natural Landmarkとして登録されている場所で、現在はトレイルが始まる場所に舗装された駐車場がある。
駐車場からクレーターまでは片道3km弱。トレイルは未舗装。所々にマークらしきものがあるので迷うことはないだろう。クレーターは、トレイルの進行方向右手から火口に入り、火口の淵まで登り一周することができる。火口上から見える光景は絶景。北東にはアンボイの町が見え、東にはブリストル・レイク、南はこの火口から流れ出した溶岩が固まった光景を見ることができる。是非、この広大な景色を体感していただきたい。火口を歩けるというのはなかなかないと思う。尚、火口の大きさは、直径約500m、高さ約80m。
(described on May 10 2019)
(updated on Aug 11 2023)