東京。ゆったりした静かな空間で、日本の近代・現代美術に触れる。
東京にある近代・現代系美術館。現在ある東京にある皇居脇の建物は1969年のオープンということで、近代・現代系美術館の東京における先駆けと言えるだろう。建物は、1969年建設のため古いが、この古さが心地良く、お気に入りの場所である。企画展は一階のスペースで行われ、センス・視点の良さが分かるが、個人的には二階から四階の常設展のスペースが気に入っている。
行くときは、ほとんどが土曜日の夜なのだが、来場者も少なく、静かな場所で鑑賞できる。特に四階にある重要文化財を展示している部屋は、作品に加え、誰もいなかったりすることが多いので、贅沢な空間だ。この部屋の横にある「眺めのよい部屋」も、人が少なく、椅子に座って、目の前にある皇居と大手町のビルを眺めることができる。とにかく、人が少ないというのはとても貴重だ。また、三階には、日本画だけを展示している部屋もあり、四階の重要文化財の部屋と共に、ゆったりした素晴らしい空間を享受できる。
美術館が所蔵している作品は日本作家のものが大勢で、白髪一雄、河原温、草間彌生、岡本太郎など、日本を代表する近代・現代作家の作品を見ることができる。個人的には、この美術館が、河原温の「浴室シリーズ」を保持しているため、「今日はあるかなあ?」と思いながら、館内を回るのが楽しかったりする。浴室シリーズは、髪の毛がなく、蕁麻疹っぽい斑点を身体に携えた人が浴室にいる絵で、全部で24枚あり、展示されていると、一枚一枚をゆっくり眺めることができる。
また、この美術館の展示スペースの一つの特徴として、展示スペースの絵の前に一人掛けの椅子が置かれている場所があることが挙げられる。これは、まさしく、「絵の前に座って、ゆっくり鑑賞して下さい」という意味であり、この心遣いができる美術館の配慮が素晴らしいと思う。通常は、絵の前に座るところがあると、何人かが座れる長椅子をイメージするが、ここは、まさしく、一人だけが座れる椅子であり、非常に気に入っている。
最近の近代・現代美術館は、美術館を建築物として評価することが多くなってきたが、この美術館は、作品の質の高さで訪問者を満足させてくれる美術館といえるだろう。ここ二十年程で、東京にも素晴らしい現代美術館ができたが、それでも、この美術館が東京にある現代美術館のベストなのではないかと思う。
1995年以降多数訪問。
基本情報
■ 名称:国立近代美術館
■ 住所 : 東京都千代田区北の丸公園3−1
■ ホームページ:https://www.momat.go.jp/
(described on Feb 10 2019)
(latest update on Jun 20 2020)