キャニオン・ディ・シェイ国定公園  (アリゾナ州)_異なる時間が流れる空間

インディアン居留地にある神々しいスパイダーロックを見下ろし、異なる時間が流れる特殊な空間を感じる。

ナバホ先住民居留地にある国定公園。かなり辺鄙なところにある。入るとすれば、西側にあるグランドキャニオン、あるいは グレンキャニオン/ページ(Page) から足を延ばすか、東側だとギャロップ(Gallup)になるだろう。

近くには、シンリー(Chinle)という町がある。地図で見ると大きな町のように見えてしまうが驚くほど小さい。建物が少しある程度の町で食事をする場所も限られている。2006年にレストランに入り夕食を取った時は、満員で地元の人が打楽器を叩きながら歌っていた。観光客を相手にしているという雰囲気もなく、非常に不思議だった。

さて、このキャニオン・ディ・シェイ国定公園だが、とにかくスパイダーロック(Spider Rock)を目指そう。この200メートル程の高さがある岩の峰は他では目にしたことがないタイプの岩だ。モニュメントバレーにスリーシスターズ(Three Sisters)という、似たような形状の岩峰はあるが少し違う。何が違うかというと、このスパイダーロックは渓谷の中に屹立していること、また、その渓谷の風を間近で感じることができることだ。

展望台は、スパイダーロックを眼下に少し見下ろす形になるが、すぐ目の前にあるように見え、その景観を楽しむことができる。また、訪れている人も少ないので、展望台にあるベンチに座り、このスパイダーロックと渓谷全体をゆったり眺めることができる。そこは、確実に他とは異なる時間が流れている。是非、この空間に身を置き、その特殊な空間を体感していただきたい。

尚、2024年にツアーに参加したガイドの方によると、このキャニオン・ディ・シェイ国定公園で特に神聖な場所は、スパイダーロックとホワイトハウスということだった。また、スパイダーロックは二つの岩が並んで屹立しているが、左側が母、右側が娘、この二本の左手、少し離れた所に一本の岩が屹立しているのだが、これはフェイスロック/Face Rockと呼ばれ父となり、この三本でFamilyと位置付けられているという話があった(これは、一般的には言われていないことらしいが)。

✓ Canyon de ChellyのPrivate Tour

2024年再訪した。展望台から見たスパイダーロックを下から見上げたかったのだ。現地にはローカルツアーがいくつかある。私はTseyi Jeep Toursという会社を選択した。スパイダーロックの下まで行ってくれるオプションがあったからだ。

朝9時にビジターセンターでガイドの方と待ち合わせ。Bobbyという年輩の方だった。実は、前日スパイダーロックまでは行けないかもしれないという連絡を受けていたのだが、最初に会った時に「5日程前に雨が降ったため、川の水かさが増していて、やはりスパイダーロックまでは行けない」との説明があった。スパイダーロックまで行く場合は5時間かかるということで、選択肢がないため、3時間に短縮してスパイダーロックの手前で折り返すこととなった。

ホワイトハウス、マミーケイブなどの遺跡、スパイダーロックは谷底にある。スパイダーロックあたりだと、谷底まで300m程度あるのだが、ツアーではこの谷底を走ることになる。では、どのようにこの谷底まで降りるのかという疑問が出てくるだろう。正解は、園内の西側、ビジターセンターがあるあたりは谷底を流れる川にアクセスできるようになっており、ここから谷底に入っていくのだ。つまり、園内は、ビジターセンターがある西から北東~南東に向かって扇状に広がり、大地が川の流れで侵食されているのだ。

まずは、ビジターセンター近くにあるThunderbird Lodge の手前で右折する。そこにあるツアー参加者専用駐車場に車を止め、ツアーの人が乗車してきたジープに乗車。ナバホの園内の事務所に行き、入園料を払い、名前・住所を記入しサインをした。一人8ドル。

ジープでしばらく進むと川に辿り着く。浅い川とその脇を走るダートを進む。川の周辺は樹々の緑が綺麗で、陽光が川面を反射し美しい。崖の上から眺めていた印象とは大きく違う。

ジープは、所々のポイントで停止し、ガイドの方が説明してくれる。崖に絵が描かれている場所があると、ガイドの方は手鏡で崖の上方にある絵を照らしながら、この場所の歴史などを説明してくれる。ちなみに、絵が崖の上に描かれているのは、絵が描かれたあと、川による大地の侵食があったことを意味している。

途中、川にジープがスタックしている光景に遭遇する。ジープが斜めになり川の横に沈んでいる。川に沈んだ横に途方に暮れている3人の姿があった。ガイドの方は、その3人と会話を交わすと、車を進めながらモバイルで電話を掛ける。状況を説明しているようだが、会話は英語だった。

何カ所かのポイントで停止して説明を受けたあと、ホワイトハウスへ到着する。この住居遺跡はアナサジ時代のものということだ。メサベルデ国立公園にある遺跡に似ている。ガイドの方の説明では、1200年頃にアナサジが住み着いていたが、10年レベルで水が出なかった時があり、この場所を後にした。その後、1700年頃にNavajoがこの場所にやってきて住み着いたということだ。尚、この場所を後にしたアナサジは、ホピ/Hopiとなり、現在は別の場所の居留地で生活している(アリゾナ州のナバホ居留区の中に位置している)。

ちなみにアナサジがどこからやってきたのかは分かっていないという説明だった。ナバホはアラスカがある北の方から下ってきたため、ホピとは文化も言語も違うという説明だった。

ホワイトハウスの谷底から、崖の上までは歩くことができる。ホワイトハウストレイルという名称だ。このトレイルを下から少し上ったのだが、谷底に到着する手前はトンネル状になっていて、そのトンネルを抜けたところは、地層が形成され、アリゾナにある「The Wave」を思い出させる場所だった。

このホワイトハウスで折り返し、出発地点のThunderbird Lodgeに戻った。時間は予定通りの3時間。スパイダーロックは、ホワイトハウスから相当先にあるので、5時間でも厳しいのかもしれない。

「スパイダーロックへは5時間で行けるのですか?」
ホワイトハウスから戻る途中ですれ違った車の人とガイドの方が話をしたあとで「彼らはSpider Rockへトライするらしい」という話を聞いて質問をする。
「It will be in the tomorrow morning」
 ガイドの方は笑いながら言う。

尚、スパイダーロックへは、雨が降らなければ問題なく行けるということだ。私が訪れたのは5月初旬だったため少し早かったようだ。もう少し過って夏になれば、川は干上がるということだった。個人的には、目的を達成できず残念ではあったが、再訪する必要があるということで、将来、戻ってきたい。

ガイドの方は、谷底で生まれ育ったということで、現在は上に住んでいるということだった。多くの人は、上と下に住む場所があり、夏は下、それ以外は上に住むということだった。

最後に一つ、ガイドの方との会話を一つ記載しておきたい。

「私は、ここに20年前ぐらいに来ています。その時はシンリー/Chinleの町にあるホテルとレストランは限られていました。今はデニーズがありますが、昔はなかったと思います。そして、20年前、私は一軒のレストランに入ったのですが、地元の人で満員でした。そういえば、訪問客に向かって打楽器を叩いている人がいたのを覚えています」
「そうだね、それは、Best WesternにあるJunction レストランだろうね」
「あっ、そうかもしれません。その時もBest Westernはあった記憶があります」
「そうさ、Best Westernだよ。私はそこで打楽器を叩いていたよ、あなたがその時見たのは私だよ」 
ガイドの方は笑いながら言った。

また、ここまで来た場合には、是非、ナバホ・インディアン居留地の中を走って欲しい。オススメルートを二つ。

【オススメルートーA】

Page – 89/160号線 — Tuba City – 264号線 – 191号線 – Canyon de Chelly –160号線 – Four Corners –160号線 – Kayenta – Monument Valley – 163 号線 – 98号線 – Page

グレン・キャニオンのあるページ(Page)からキャニオン・ディ・シェイ(Canyon de Chelly)を経由し、 フォーコーナーズ(Four Corners)、モニュメントバレー(Monument Valley)と組み合わせて一周するコース。