ロンドン、マーキークラブ無き現在、ロンドンのロックシーンを牽引する場所で、ロック文化が生き続けていることを体感する。
ロンドンのロック系ライブハウス。ロンドン北部にあるカムデン街の中心にある交差点からすぐ、というより、ほぼ交差点の角にある。カムデン街はマーケットが並び、若者が集まる場所として有名で、ライブハウスもいくつか存在するが、ロックに拘って運営しているライブハウスとなると、このアンダーワールドになる。
ロンドンのライブハウスと言うと、個人的には、マーキークラブ/Marquee Club が頭に浮かぶが、このマーキークラブが閉店してからは、ロックに拘ったライブハウスも少なく、そういう意味では、このアンダーワールドは、非常に貴重な存在だ。
このライブハウスは、地下にある。中のスペースは、適度に汚く、適度に荒んでいる。雰囲気が素晴らしい。地下を降りると、部屋の中央に、四方からアクセスできるカウンターバーがあり、その奥にステージが位置している面白い造りの場所だ。ステージ前の観客エリアは、一メートル程度の高さの階段を降りた位置にあり、ステージの高さも1メートルという感じ。このステージの凄いところは、観客エリアのほぼ中央に太い柱が立っていて、ステージがよく見えないことである。
場所によっては、演奏者が見えない。ボーカルが見えず、ベースだけ見ていたこともある。このあたりは、ライブハウスを営業することを考えて、建物が造られたのではなく、イギリスの伝統である旧いものに価値を見出す、という発想より、建物が先に存在していたことによるものなのだろう。ステージは、幅10メートル程、意外と広い。楽屋はステージに向かって左側、ステージと同じ高さにあるが、バンドの付き人やら招待客らしき人が、その周辺を陣取っているのを見るのも楽しい。
2019年にロンドンを訪れた際には、2018年に浸水があったようで、Underworld の名前で、スケジュールは組まれていたが、会場は近くにある他の場所を使用しており、訪れることができなかった。日本であれば、ウェブに謝罪の言葉が掲載されていたりするのだろうが、このアンダーワールドでは、そのような感じには見えなかった。ロンドンは、エレベーターが突然止まって閉じ込められたり、ボイラーが故障してお湯がでなかったり、建物の屋根が落ちてきたりなどということはよくある話で、不便なことが頻繁に起こるが、イギリス人からすると、浸水があって営業ができなくなることなど、普通のことであり、別に驚くことでもないのだろう。
最後に一つ、このライブハウスの帰りにあった出来事を紹介する。演奏が終わってライブハウスを後にしたのは夜12時近く。近くにあるバス停まで歩き、そこでバスが来るのを待っていた。冬の寒い時ということもあり、通りを歩く人も少なかった。すると、おもむろに一人の若者が私の前に現れて、声を掛けてきた。「これ買わない?」とその若者の男は私に言った。普通の若者だ。男は手に何か持っていたが、暗くてよく見えず、顔を近づけて確認すると、それは、電気トースターだった。「それって、トースター?」と私が訊くと、男は、そのトースターを私の目の前にかざして、「いいスタッフだよ」と言った。私は笑いながら、「いらないな」と言うと、男は礼を言ってその場を去った。男は、素の表情だったので、本気でそのトースターを売っているようだった。日本では奇異な行動にうつるかもしれないが、ロンドンではこの類の話はよくあることだ。
ちなみに、近くには Electric Ballroomという中規模のライブハウスも存在する。このライブハウスは古い作りの、雰囲気のあるライブハウスで、アンダーワールドと共にお勧めの場所だ。
2012年、2014年訪問
基本情報
■ 名称:Underworld
■ 住所 : 174 Camden High St, Camden Town, London, UK
■ 演奏したミュージシャン:
The Offspring, Queens of the Stone Age, Radiohead, Foo Fighters, Soundgarden, Sum41
■ ホームページ: https://www.theunderworldcamden.co.uk/
(described on Dec 30 2018)
(latest update on Feb 15 2020)