サフナサフニド フォーク & アウトサイダー美術館 (Akureyri, Iceland)

アイスランド北部、アクエイリ。辺境の地で、個人経営による美術館のお手本のような場所が存在することに驚愕する。

アイスランドの北東にある アクレイリという街の郊外にある美術館。現代美術館というよりも、名前の通りフォークアート系の美術館だ。アイスランドの街といえば首都であるレイキャビクが頭に浮かぶと思う。レイキャビクでさえ遠くまで来たなあ、と思わせてくれる場所だが、まさか、そこからさらに離れた街にある(町でもいいかもしれない)、しかも街中ではない、車で少し走った道路脇にこのような素敵な美術館があることに驚かされた。

アクレイリは、レイキャビクから北東へ直線距離で300㎞程の場所にある、アイスランド第二の街だ。第二の街と言っても人口は二万人程度。街の中心には、店やレストランが集まっているエリアはあるが、その数は非常に限られている。ただ、街中は非常に綺麗で、カラフルな建物を見ながら散策するのが楽しい。

さて、このサフナサフニド フォーク & アウトサイダー美術館だが、事前情報はなく、ホテルのロビーに置いてあるパンフレットか何かを見て、時間をもてあましたため訪れたというのが経緯だ。街中からフィヨルドに沿った道路を進むと、フィヨルド沿いに、高さ十メートル程の男性らしき人の木像が見えてくる。その脇にある二階建ての家屋は、一見すると一般住居にしか見えない。そもそも、こんな場所に美術館があることを誰が想像できるだろうか。

敷地内に車を止めてフィヨルドの方に目をやると、牧草地に牛の姿が見える。その奥に見えるフィヨルドとのコンビネーションが素晴らしい。絵になる場所だ。そこで、改めて、「なんで、こんな場所に美術館があるのだろう?」という問いが浮かぶ。

建物の正面入口を入ると受付があり、女性が応対してくれた。一階から館内、いや、家屋の中を徘徊する。各部屋にはフォークアート系を中心としたアイテムが並んでいる。一階のある部屋に並んでいる木彫りの像は、アイスランドで作られたものなのだろう、秀逸だった。部屋の中に自分だけいると、嬉しくなるような感じの場所だ。

二階に上がると、すぐに目に入るのが、二メートル程の高さの雑誌を並べる棚と、その前に並ぶ四体の椅子。雑誌の表紙にでもなりそうな光景。並んでいる美術系の雑誌もさることながら、前に並んだ椅子の位置と形状がマッチしている。一通り館内を歩いてから、この場所に戻ってきて眺める。この美術館を運営している人のセンスなのだろう、感心してしまう。

美術館の女性に話を訊いたところ、この美術館は、昔は道路の反対側にあったが、場所を拡張するため、今の場所に移ってきたということだった。「レイキャビクにも、この手の場所はないよ」とその女性は教えてくれた。受付少し奥には、テーブルと椅子が並んだ休憩所があり、コーヒーとオレンジジュースが自由に飲めるようになっていた。

この美術館は、ほとんど名が知られていないが、周りの景観の素晴らしさ、館内に展示されている作品の一貫性、美術館が持つ素朴な雰囲気が印象的だった。個人が美術館を経営する場合の理想形に近いのではないかという気がする。末永く営業を続けていただきたいし、また、是非、再訪したい場所である。

2012年訪問。

​基本情報

​■ 名称:Safnasafnid The Folk and Outsider Art Museum
■ 住所 : Svalbarðsströnd, 601 Akureyri, Iceland
​■ ホームページ:
http://www.safnasafnid.is/english/

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