革命の女たち / アンゼルム・キーファー (セゾン現代美術館)

軽井沢、セゾン現代美術館。展示室を覗き、ただならぬ雰囲気を感じ、その空間に充満するパワーに圧倒され動けなくなる。

軽井沢、セゾン現代美術館にある作品。2022年に初めてこのセゾン現代美術館を訪れて発見し、衝撃を受けた作品だ。最初に作品が展示された空間を目にしたとき、その空間に充満するパワーに驚き、何を扱っているのかが分からず、作品の部屋のプレートにある説明を見て改めて衝撃を受けた。他の美術館でアンゼルム・キーファーの絵画を見て感心したことがあったため、作家のことは認識していたが、この作品を見つけ、改めてアンゼルム・キーファーの凄さを実感した。

題材は、フランス革命において不合の死に至った女性たちで、この女性たちを弔う意味があるようだ。インスタレーションは、部屋に置かれた14の鉄製ベッド、壁に貼られた名札、ベッドにある窪みとそこに残る水、土塊、草花、そして、奥には鉛のシートに貼られた写真が壁に掛けられている。その写真には、上方から枯れた向日葵が垂れ下がっている。

フランス革命(1789年~1799年)の頃は、まだ女性の立場は弱く、男性を支えることが美徳とされていた時代であったが、一方で、フランス革命時に歴史に名を残すことができなかった女性たちが居たことを記す意味合いと、かつては、女性が酷い扱いを受けていた事実を忘れないようにすることが、この作品に形となって表現されたに違いない。

2023年に軽井沢を訪れる機会があり再訪した。ベッドが並んでいる部屋は、中に入ることができないが、美術館の方に確認したところ、希望する人は入れるということで中に入れさせていただいた。部屋の入口からは、一番奥の壁に掛けられた写真は見えなかったが、中に入りその写真と前に並ぶ朽ち果てた感のあるベッドを前にしたとき、しばらく動くことができなかった。この空間には、「歴史の重さ」「人間の不条理さ」が詰め込まれているようであり、アート作品が鑑賞者の意識の中に訴えかけてくる。そういう作品だ。

尚、美術館の方の話では、昔は中に入ることができたが、鑑賞者がベッドを傷付けたことがあって、それから中に入れないようになったとのことだった。また、部屋に入った人の中には、この空間が発する負のエネルギーに、気分を害する人もいるということだが、この話にも納得できてしまう。

セゾン現代美術館には、アンゼルム・キーファーの作品が、この「革命の女たち」以外に二つある。一つは「オーストリア皇妃エリザベート」というタイトルの歴史上の女性を題材にしたインスタレーション作品で二階に展示されている。大版の作品を前にし、ただならぬ空気を感じ、プレートに書かれた説明を読み唸ってしまった。もう一つは、展示されていなかったが、「ヘリオガバル」というローマ帝国の皇帝を題材にした作品も所蔵しているとのことだ。

作品は撮影禁止。作家指示による著作権によるものということだが、作品のプレートの撮影は了解いただいたので掲載している。また、作品は、購入した絵葉書を掲載している。ご了解いただきたい。

作品を鑑賞し「圧倒される」ことがあるが、この作品は、まさに「圧倒される」作品だった。興味を持った方は是非足を運んでいただきたい。時間とお金を掛けてでも見る価値がある作品だ。

尚、残念なことに、セゾン現代美術館は、この記事を書いた直前の2023年11月1日に施設改修のため長期休館に入ってしまった。再開は2026年4月の予定とのことだが、改修後の新たな環境で、どのように展示されるのか非常に楽しみだ。

2022、2023年訪問

基本情報

​■ 名称: 革命の女たち / アンゼルム・キーファー
■ 住所 : 長野県北佐久郡軽井沢町長倉芹ケ沢2140 (セゾン現代美術館)
​■ ホームページ:https://smma.or.jp/ (セゾン現代美術館)
■ その他
 ・セゾン現代美術館は2026年4月(予定)まで休館中です。

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