プンタ・デラ・ドガーナ (Venice, Italy)

イタリア、ベニス。かつて税関として使われていた建物を、安藤忠雄が現代風に改築。煉瓦の壁とコンテンポラリー作品の調和に感嘆する。

イタリア、ベニスにある現代美術館。イタリアは美術の宝庫ではあるが、現代美術系になるといい印象はない。どうしても中世美術が中心になってしまうし、保守的な文化もあるのだろう、イタリアで足を運んだ現代系美術館はしっくりしたものに出会っていない。ただ、ベニスは「ベニスビエンナーレ」「ベニス国際映画祭」が行われる場所でもあり、また、この「プンタ・デラ・ドガーナ」は、安藤忠雄の設計ということもあり期待していた場所だった。

サンマルコ広場の大鐘楼からの景色
(PIXTA : 108056368)
写真素材のピクスタ

美術館は、サンマルコ広場があるベニスの中心から見ると、南側の運河を渡った場所、海に向かって細くなった舳先に位置している。安藤忠雄の近代的な建築をイメージして建物の前まで行くと、その極めて古風な感じの石造り建造物の外観に「これが?」となる。この建物は17世紀に建てられた、かつて税関として使われていた場所ということだ。外観を見て中に入るとそのギャップに驚かされると思う。内装は安藤忠雄が得意とするコンクリートではなく煉瓦を多用しているが、しばらく歩いていると館内全体がモダンな雰囲気で覆われていることに気付く。

壁は煉瓦で敷き詰められているし、コンクリートが配置されている訳でもない。無理に現代風の空間を創ろうとしているようには見えないが、展示されている現代芸術作品とのバランスが良いのか、例えは貧弱だが「センスの良い空間」が形成されている。館内を歩いていると、点在する作品を見ながら空間を楽しむため、同じ場所に戻ってきて徘徊したくなるという感じだろうか。

一階の奥には、二階まで吹き抜けのスペースに、縦2メートル、横10メートルほどある絵が飾られていて目を引いた。おそらく、作品単体の力というよりも、建物の煉瓦の壁が創り出す柔らかさを感じさせる空間とのバランスが秀逸なのだろう。

また、二階の奥のフロアに置かれていた水晶をモチーフとしたオブジェの展示が印象に残りその場をしばらく離れることができなかった。一通り館内を巡ってから気付いたのは、壁は煉瓦をベースに構成されているが、床がコンクリートあるいは滑らかな材質を使っていることだ。現代的な雰囲気を醸し出しているのは、壁ではなく床なのかもしれない。

ちなみに、この美術館に展示されていた作品の数々は、同時期に開催し足を運んだ「ベニスビエンナーレ」を凌駕する展示内容だった。いや、もしかすると、作品自体は「ベニスビエンナーレ」の方が優れていたのかもしれないが、作品と空間のバランスの観点で、このプンタ・デラ・ドガーナが勝っていたのかもしれない。

それにしても、ベニスビエンナーレ開催中、かつ週末にも関わらず館内は人が少なかった。美術館の魅力を引き出す条件の一つに「人が少ないこと」あるが、この世界屈指の観光地でも空いているのは、羨ましい。

最後に、建物の一番奥が塔になっているのだが、階段を上ったところのスペースが気に入った。是非足を運んで欲しい。

2013年訪問

​基本情報

​■ 名称 : Punta della Dogana
■ 住所 : Dorsoduro, 2, 30123 Venezia VE, Italy
​■ ホームページ:
https://www.palazzograssi.it/

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