コロンバ美術館 (Koln, Germany)_白い空間に圧倒される。

ドイツ、ケルン。白い天井、白い壁、白い床で統一された空間で、古美術品と現代絵画の絶妙なバランスの展示に感嘆する。

コロンバ美術館は、ドイツ、ケルンにある総合美術館。ケルンで見るべきものというと、真っ先に頭に浮かぶのがケルン大聖堂だ。教会の類は色々目にしてきたが、「不気味」という言葉がしっくりくる教会で、空に向かって突き刺すような尖った形状物と全体が黒っぽい色で覆われた建築物は、威厳を保つと同時に不気味さを感じる。形容が不適切かもしれないが、個人的には「悪魔的」な要素を感じてしまう。

このコロンバ美術館は、ケルンの中央駅から少し歩いた場所にある。事前情報なしで訪れたが、期待以上で驚かされた美術館だ。街中にある都市型美術館と言えるが意外と大きな建物。白を基調とした外観は普通のオフィスビルにも見えるが、建物の中に入るとセンスの良さに驚かされる。

館内に入り受付を済ませると、係の人が紙の冊子を渡してくれる。2024年訪問時の冊子は、厚さ5㎜、40ページ程度だった。後述するがこの運営方法にこの美術館のこだわりが現れていると理解した。

建物は三階建て。GF、1F、2F。GFの奥には遺跡が展示されている。ここにはローマ帝国時代から積み上げられてきた遺跡がある。9世紀(冊子の説明には?/疑問府有り)に教会が建てられ、その後13世紀まで増築され、最終的に新しい教会に置き換えられたということだ。このような経緯もあり、この美術館に展示されている作品は、キリスト教を意識したものが中心となっている。

内装は、基本はコンクリートの打ちっぱなしで、どことなく、日本の直島にある地中美術館を彷彿とさせる。上階に昇っていく階段だけとっても嬉しくなる。途中、Reading Roomという名称のラウンジがあり、その雰囲気&センスの良さに感嘆する。このラウンジの誰もいない贅沢な空間で椅子に腰を下ろす。心が落ち着く。

1Fと2Fに展示室が配置されている。2FはGFにある遺跡のスペースの高さが2Fまで達しているため展示スペースは狭いが、展示作品には思わず目を引くアイテムがある。展示作品は古美術、宗教画、絵画、インスタレーション、映像作品と幅広い。

そして、2Fがこの美術館のハイライトとなるが、体感したことがない空間だった。冊子を見ると2Fには展示室と廊下のスペースに番号が振られている。#10から#22まであるので、展示スペースとしては13ヶ所あることになる。一番奥の中央の壁、床、天井が白で統一された空間の中央に作品が展示されたスペースは静謐さを感じる素晴らしい空間だ。

この2Fだが、#17、#19、#21の部屋が素晴らしかった。いずれも天井までの高さが10mから12m程度あり床面積は狭く、展示室には直接アクセスできないようになっている。つまり、他の展示室を経由しないとアクセスできない造りだ。この空間設計には目を見張るものがあった。

特に#17と#19の展示室は狭い。広さは5mx5mというところだろうか。このスペースに作品が展示されている。2024年訪問時は、#19の部屋には宗教系の作品が三つ、そこに現代絵画が一つ壁に展示されている。このセンスの良さはどう表現したらよいだろうか、今まで見たことがない空間だった。

2024年の訪問時、#17の展示室には、天井から糸で下がった錘が床に置かれたグラスを周回するが、グラスには触れそうで触れないというコンセプトの作品が展示され、#21も宗教系と現代系の作品が並列配置されインパクト充分だった。

展示されている作品を冊子で確認したが、知っているアーティストはアンディ・ウォーホル(Andy Warhol)だけだった。2Fの#15のスペースに彼の十字架を描いた絵画作品があり、その横には十字架の古美術アイテムが並んでいた。このコントラスト、展示の仕方には驚くしかなかった。

館内の照明を落としていることと、ゆったりとしたスペースに限られた数の作品を展示する手法は展示空間を特別なものにしている。また、冒頭に記述した冊子だが、展示物には作品名・アーティスト名を記述したプレートを設置していないため、この冊子が必要となることが分かる。通常プレートを設置すると思うが、あえてプレートを設置しないことが特殊な空間を齎す一つの要因となっているに違いない。

最初の訪問は日曜日だったが、ケルンの中央駅から歩いてくる途中はもの凄い人通りで、東京の渋谷あたりの人混みを思い出したが、この美術館の中は限られた数の訪問者だった。このギャップもこの美術館にインパクトを感じた要因かもしれない。

ケルンにはルートヴィッヒ美術館という現代美術館もある。この美術館はピカソの部屋があり、多くのウォーホール作品が並ぶ素晴らしい美術館だが、このコロンバ美術館訪問後は、ルートヴィッヒ美術館の印象が霞んでしまうほどだった。

このコロンバ美術館を訪れて改めて感じたのは、美術館で非日常空間を創り出す方法論として、「白い壁」「白い床」「白い天井」がキーポイントであること。また、展示室には、敢えて「限られた数の作品だけを展示する」ことが重要であることも再認識させられた。ケルンを訪れた際には、ルートヴィッヒ美術館だけでなくこのコロンバ美術館も忘れずに訪れていただきたい。

尚、退館後、建物裏に廻ると人が入っていく扉を見つける。中に入るとそこは教会だった。祭壇前の椅子に座り、礼拝している人の姿があり、この美術館が教会の地に建てられたことと、この美術館のテーマがキリスト教であることを再認識した。

2013、2024年訪問。

基本情報

■ 名称:Kolumba Museum
■ 住所 : Kolumbastraße 4, 50667 Köln, Germany
​■ ホームページ:
https://www.kolumba.de/?language=eng