サンフランシスコ、ヘイト・アシュベリー。60年代カウンターカルチャーの中心地を徘徊し、ヒッピー文化の残り香を探す。
サンフランシスコと言うと、「リベラル」という言葉が頭に浮かぶ。現在は、サンフランシスコの南にある IT先進エリアであるシリコンバレーに伴う自由な雰囲気のイメージが強いが、1960年代、このサンフランシスコがカウンターカルチャーの中心地だった影響が大きいだろう。
端的に言うと、既存社会に対する反抗、それは、ドラッグの使用、性の解放、反戦、東洋宗教・哲学の融合等など。場所で言うと、いわゆるビート・ジェネレーション作家の活動の中心となったノースビーチエリア、そして、もう一つが、ここで記述するヘイト・アシュベリー、ヒッピー文化の中心となったエリアだ。
カウンターカルチャーの象徴であるヒッピーは、1966年頃に、このヘイト・アシュベリー地区に住んでいた若者を指して使用されるようになったもので、当時ベトナム戦争を進めていた政府に対する反対の意思が、生活・文化に形として明示されたと言えるだろう。キーワードを並べると、「自然」「愛」「平和」「自由」「セックス」「サイケデリック」「LSD」「マリファナ」「ヨガ」「インド」「仏教」「禅」など。
このヘイト・アシュベリーの場所だが、ダウンタウンの高層ビルが立ち並んだ中心街から西(南西)へ2-3キロほど行った場所にある。東西に走るヘイトストリートと、交差するアシュベリーストリートの交差点がこの「ヘイト・アシュベリー」の名称だ。ヘイトストリートの西は、ゴールデンゲートパークに突き当っているが、この突き当りから東に向かって1kmほどの通りの両側に店が並び、カウンターカルチャーを感じることができる。
並んでいる店は、一般的なレストラン、マーケットに加え、古着屋、土産物屋、東洋系アイテムに関するショップなど。カウンターカルチャーを思わせるサイケデリック調の派手な衣服を扱った店、派手なペインティングを施した店も存在するが、昔に比べると減ってきているかもしれない。ちなみに、カリフォルニアはマリファナが合法となったため、マリファナショップもある。
さて、この場所を訪問して何をするか? であるが、いくつか列記したい。
ヒッピーっぽい人が歩いているのを確認する。
私の最後の訪問は2024年だが、かつてほどではないが、ヒッピーを思わせる人の姿は確認することができる。
長髪、ヨレヨレのジーンズ+Tシャツ。路上に立っている人は、ギターを手にしていたり、折り畳み椅子を広げて座って談笑していたりする。また、ヒッピーを象徴するような、長方形のボックス車を路上に停め、徘徊している人の姿もあった。このような人々は、年輩の人がほとんど。50代以上というところだろうか。
ヒッピーとは、思想面での文化ではあるが、その表現方法が見た目でもあり、「ヒッピーとはこういう感じだったんだ」というのを理解することはできるだろう。勇気がある方は、「話し掛ける」というのもありかもしれない。私は、話し掛けること自体は苦にはならないが、都会ということもありハードルは少し高い気がし、残念ながら正面切って話し掛けてはいない。ただ、ヒッピーっぽい人がいるあたりで、立ち止まっていた時に、「Investor」と言われたことはある。この「Investor」という言葉だが、カリフォルニアの北にある、アルケータという町でも言われたことがある。ある意味、差別用語にも聞こえるので、このような言葉が出て来る時は、関わらない方がいいと思う。
店を徘徊する。
面白そうだと思った店には迷わず入って欲しい。店員の人は観光客慣れしているのと都会でもあるので、USの田舎のように、話が始まることは少ないが、足を踏み入れて欲しい。来客が多い店というより、空いている店が狙い目かもしれない。ちょっとした切っ掛けで話ができるかもしれない。
ジェリー・ガルシアとジャニス・ジョプリンがかつて住んでいた場所を訪れる。
1967年、この場所で、サマー・オブ・ラブと呼ばれる社会現象が起きる。新しいライフスタイルに影響されたヒッピーが、このヘイト・アシュベリーに集まってきたのだ。その数10万人。この地で共同生活を行い、自由恋愛を謳歌した。
このサマー・オブ・ラブの象徴となったロックアーティストに、グレートフルデッド、ジェファーソン・エアプレイン、ジャニス・ジョプリンがいるが、グレートフルデッドの中心人物だった「ジェリー・ガルシア」と「ジャニス・ジョプリン」が住んでいた家が、それぞれ、アシュベリーストリートに存在する。
カウンターカルチャーと音楽は密接な関係にあるが、この二人を知る人は訪れて欲しい。住居は1960年代から変わっていない。両方とも人が住んでいるようだ。ヘイトストリートから歩いてすぐの場所だ。
Amoeba Music/アメーバ・ミュージック
ヘイトストリートの西の外れにあるレコード・CD屋。倉庫のような平屋の建物にレコード・CDが並んでいる。会計カウンターがある少し高い場所から敷地を見渡す。広さは70mx70mという感じだろうか。爽快な眺めだ。オンライン化が進んだことより、レコード・CD屋は少なくなってきたが、まだまだアナログ愛好家は多いようで、店内には、CDを買い漁る人の姿が目に付いた。
壁には、バンドポスター(ロックポスター)が並んでいる。このバンドポスターは、アメリカで昔から続いている文化で、眺めているだけで楽しい。ちなみにこのAmoeba Musicは、この場所以外に、バークレーとロサンゼルス・ハリウッドにある。
ハプニング
2024年の訪問時、ハイトストリートを西から東へAmoeba Musicに向かって歩いている途中、交差する通りを入ったところにある建物のペインティングされた壁の前に裸の男性二人が立っているのを見つける (Shrader Street)。マッチョ系の男性。二人ともサングラスを付けている。陰部に布を被せただけの恰好で、全裸にしか見えなかった。
何かのパフォーマンスだと思うが、周辺に人の姿はなかった。2017年の訪問時も、これに近い光景を見た記憶がある。歩くときは、周辺にも気を配るといいかもしれない。尚、私がAmoeba Musicを徘徊し、戻ってくるときには、この二人の男性の姿はなかった。陽が高い15時頃の出来事だ。
サンフランシスコは、公共交通機関が整っていて、徘徊しやすい。ヘイト・アシュベリーも、ダウンダウンの中心からバス一本で行くことができる。是非、60年代の文化に興味がある方は訪れていただきたい。
訪問年:1988、1998、2016、2017、2024年
基本情報
■ 名称:ヘイト・アシュベリー
■ 住所 : アメリカ、サンフランシスコ
■ ホームページ:https://www.sftravel.com/neighborhoods/haight-ashbury
(described on Oct 6 2024)