アンダーソン現代美術館 (Roswell, New Mexico, USA)

アメリカ、ニューメキシコ州、ロズウェル。ギャラリー風の美術館に入り、作品で埋め尽くされた空間に圧倒される。

アメリカ、ニューメキシコ州、ロズウェルにある現代美術館。ロズウェルはUFO事件で有名な町だ。ロズウェルに観光に来た多くの人は、町の中心にある「UFO博物館」に足を運ぶと思うが、この美術館は、「UFO博物館」から車で数分の場所にある。

写真素材のピクスタ

さて、この美術館だが、アメリカの田舎町にあるという要素を差し引いても、非常に驚かされた場所である。単純な形容で恐縮だが「凄い」。「凄い」点を列記すると下記になる。

  • 現代アートに特化している。
  • ギャラリー的な美術館だが、ギャラリーの規模を超越している。
  • 作品数が多く多彩。圧倒される。
  • 作品が館内に詰め込まれて展示されているが、何故かゴチャゴチャ感がない。
  • 鑑賞している人がほとんどいないため、空間を占拠できる。

館内に入ると、入口脇の事務所からスタッフの方が出てきて挨拶をしながらこの美術館について説明してくれた。美術館だが入場料はなし。このあたりはギャラリー的だが、展示されている作品を販売していないので、この観点では美術館という区分が適切。

倉庫のような平屋建ての建物は、12の仕切られた区画で構成されている。天井まで5~6m程度あるゆったりした空間に現代アート作品が並んでいる。いや、並んでいるという言い方は正確ではないだろう。敷き詰められているという形容がしっくりくる。

作品は、絵画、デザイン、写真、オブジェ、彫刻、ビデオ、インスタレーションと多彩で、個人的に注意を惹く作品が多数存在していた。現代アートに特化しているが、ポップからシック、コミカルなものまで多種多彩。訪れた人は必ず好みの作品を発見できると思う。

実は、この美術館に展示されている作品は、Roswell Artist-in-Residence Program(RAiR)というアーティスト・レジデンス・プログラムで制作されたものである。このプログラムだが、1967年から始まっており、審査を通ったアーティストが、ロズウェル郊外に準備された住居+アトリエで1年掛けて作品を制作する。このプログラムを主催しているFoundationからは、給付金も出るということだ。

現在の美術館は、1994年に開館。上述のRiARに参加した作家が制作した作品を展示していることになるが、作品数は500以上とのことだ。12ある区画のうち、3つほどは大きなスペースを割いていた。部屋の大きさは20mx10mという感じ。壁は作品で埋め尽くされているが、系統が似た作品を意識して並べているようにも見え、違和感はなかった。美術館で作品を見せるテクニックとして、「空間に置く作品数を限定する」というのがあるが、作品で埋め尽くすという常識に反した手法は、展示する人のセンスの良さなのだと思う(もちろん、展示スペースの制限もあるが)。鑑賞者がいない静かな空間で、この作品で埋め尽くされたスペースに身を置き「圧倒される」感覚を持った。部屋の所々に設置されているソファーに座り、この「圧倒される」感覚を体感いただきたい。

尚、ロズウェルには、もう一つ、ロズウェル・ミュージアム(Roswell Museum)という美術館と博物館が混在したミュージアムがある。地元アーティスト中心のカラフルな作品が目立った。この美術館も併せて足を運んでいただければと思う。

2023年訪問

基本情報

​■ 名称:アンダーソン現代美術館 (Anderson Museum of Contemporary Art)
■ 住所 : 409 E College Blvd, Roswell, USA
​■ ホームページ:https://www.rair.org/about-amoca

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