ロサンゼルスの住宅街、普通の一軒家にしか見えない場所で、成功することを夢見て演奏するバンドの熱量に驚愕する。
ロサンゼルスにあるこのアンタイクラブ / Anti-Clubは、メジャーになる前のレッドホットチリペッパーズが演奏していたことで知られている。メルローズ通りとフェアファックス通りの交差点付近の、店が立ち並んだ賑やかなエリアから、メルローズ通りをロサンゼルスダウンタウンに向かって少し走った場所に位置していた。
周りは住宅街で、ウェストハリウッドあたりからすると、住んでいる人が違う感じの場所で、駐車するスペースを探すために車を徘徊させた。ライブハウス自体は一軒家を改造した感じの造り。建物前に人が居なければ、一般住居だと思い通り過ぎてしまうような感じだ。一階の扉を入り、左に行くと、右手にバーカウンター、左手が演奏スペースという感じ。
このライブハウスで印象に残っているのは、バンド。私が訪れたのは、1995年と1998年。最初に行ったときに見たローカルバンドの演奏が、記憶に焼き付いてしまっている。その四人編成のグランジ系ロックバンドは、エネルギッシュ。演奏もレベルが高く、しっかりしていた。終盤にはボーカルがシャウトし、観客席に下りてきて、フロアに倒れ、痙攣を起こすというパフォーマンス。その時の観客は二十人程度。私は後方の壁に寄りかかりながら見ていたが、圧倒されて、しばらく放心状態だった。バンドの名前は忘れたが、ドラムのバスドラに、豚の絵が描かれていたのは覚えている。
ステージは幅五メートル、奥行き三メートル、高さは数十センチ、ステージの前は、五十人程が入れば一杯という感じだった。そもそも、ライブハウスを営業することを考えて建てられた場所とは思えず、また、周りが普通の住宅街ということもあり、ローカル感に溢れた空間だった。
このライブハウスは、2000年前に閉店してしまった。確か、オーナーなのかはわからないが、名物の年輩のおばさんがいるという話を聞いたことがある。昼間に、前の道路を車で通ったときに、ライブハウスの前を掃除していた年輩の女性がいて、この人がオーナーなのだろうか考えたことがあった。もしかすると、この音楽好きな女性が、一般住居を改装してライブハウスにしたのではないかという気がしている。
このローカルに根付いたライブハウスで、レッドホットチリペッパーズが演奏していたことは驚きであった。また、ライブハウスが本来担うであろう役割、地元のバンドが活動し、成功していくという流れを具現化する場所、という側面において、そのイメージがフィットするライブハウスだった。個人がライブハウスを経営する視点では、非常に参考になる場所だと思う。
基本情報
■ 名称:Anti Club
■ 住所 : 4658 Merlose Ave, Los Angeles, CA, USA
■ 演奏したミュージシャン:
Red Hot Chili Peppers, System of a Down, Weezer, Faith No More, Sonic Youth, The Cult
(described on Dec 30 2018)
(latest update on Jan 18 2020)