「美術に何を求めますか?」という問いがあったとすると、私の答えは「発見」になる。私はもっぱら現代美術を鑑賞することに楽しみを見出すのだが、なぜか、中世などの古い芸術(絵画)には興味が湧かない。理由はよくわからないが、おそらく「日常」をベースとしたものだからだ。
古い芸術はそこに描かれている絵や彫刻が、ある程度想定の範囲内のものであり「創り出すための技術が高い」ことに焦点が当てられている気がする。また、古いものになると作者が不明だったりするが「個」が明確ではないため、作品が普遍的なテーマを扱うこととなり、想定の範囲内になってしまう。
現代芸術は、ときに訳がわからなかったりする。作品を見て笑ってしまったり、頭を捻ったり、納得したり、怒ったり、気分が悪くなったり、共感したりする。また、そこに今まで感じたことがない何かを発見することがあり、そのような発見があった時は、しばらくそのことについて思考する。そして、その思考が他の領域に広がり、血肉になっていく気がする。
一方、「美術館に何を求めますか?」という問いがあったとすると、私の答えは「非日常空間」になる。そこには、広大なスペースがあり、作品も含め、視覚的に満たされた空間が存在する。それは、特別に美術鑑賞するためだけに造られた空間であり、その空間に身を置くと日常から距離を置くことができる。
また、美術館では訪問者が少ないことが、非常に重要になる。いくら空間が素晴らしかったとしても、その場所が大勢の訪問者で埋まっていると、そこは「日常空間」になる。
ここでは、私が訪問した現代美術館の個人的なランキングを記載している。有名な美術館から、あまり知られていない美術館まであるが、ランキングの基準には「インパクト」が含まれる。それは、その美術館が展示していたある作品に驚愕した場合だったり、その美術館が人里離れた場所にあり「えっ、何でこんなところにあるの?」というものだったり、その美術館での人とのやりとりが印象に残っている場合だったり、展示作品ではなく美術館の建物だけに感銘を受けたようなものだったりする。そういう意味では極めて個人的なランキングであり、旅行サイトに出てくるような「口コミランキング」とは少し異なるかもしれない。
でも、美術、特に現代芸術のアーティストは、万人に評価されるために作品を造っている訳ではないはずであり、一部の人にその作品の意図を理解してもらい、あるいは喜んでもらえれば、その目的は達成されたと考えると、すべての人の意見によって構成されたランキングは、現代芸術の基本的な考え方に反するような気がする。従い、私のような一個人が、好きなように構成したランキングの方が、現代芸術が持つ世界観にマッチしているに違いない。
現代美術に興味がある方、「非日常空間」を求めている方は、記事に目を通していただき「行ってみたくなった」と感じたら、是非、足を運んでいただきたい。
(described on Feb 10 2019)
(latest update on Dec 2 2023)