DIC川村記念美術館 (Chiba, Japan)

緑に囲まれた美術館。マーク・ロスコルームで、不明瞭な矩形輪郭の色彩を眺め、瞑想に耽り、雑念を取り払う。

千葉県佐倉市にある私設美術館。開館は1990年と古い。DIC株式会社という化学メーカーが収集した美術品を公開している。DIC株式会社の総合研究所敷地内に建てられた美術館は二階建ての洋風建築。周りは森林と池に囲まれており、郊外型・自然型美術館の範疇に入るだろう。

美術館の入口前には池(おそらく人工湖)が広がり、建物に入ると二階まで吹き抜けのロビーがある。ロビーを抜けて左に折れると、最初の展示室の部屋101があるが、この美術館の特徴は、海外作家の作品が豊富にあることだ。ピカソ、シャガール、マグリット。1900年代の作家の作品が中心。ピカソの絵はあまり見たことがない作風の作品だった。二階の展示室には、1900年代後半に製作された比較的新しい作品も見受けられたので、所蔵品の収集は継続されているのだろう。

そして、この美術館のハイライトは、抽象表現主義の代表作家であるマークロスコの作品だけが展示された「ロスコルーム」だ。一階一番奥106の六角形を平たくした形状の部屋。ライトを落とした部屋に赤紫系に彩られた矩形が描かれた七つの作品が壁を埋め尽くしていた。一番大きな二枚の絵は、縦3メートル、横5メートル程。部屋の中央には、背凭れのないソファーが配置され、静かな空間に身を置くことができる。

ソファーに腰を下ろし不明瞭な矩形輪郭の色彩を眺めていると、雑念が取り払われ「無」を感じることができる。展示室の構造と雰囲気は、パリのオランジュリー美術館にあるモネの「睡蓮」の作品だけが展示されている部屋に近いかもしれないが、瞑想に耽るレベルまで到達したい方は、このマークロスコの部屋の方が断然オススメだ。

尚、このマークロスコだけの作品が展示されている空間は、ロンドンのテート・モダン、ワシントンDCのフィリップス・コレクション、ヒューストンのロスコ・チャペルだけということだ。

https://kawamura-museum.dic.co.jp/art/

他には、二階の展示室200に、サイ・トゥオンブリーの絵が一枚と彫刻が一体展示されただけの部屋、「トゥオンブリールーム」があった(2021年訪問時)。部屋の両側からは建物の外にある森林が見えたが、サイ・トゥオンブリーの作品が、部屋から見える景色に負けているほどの秀逸な空間だった。

https://kawamura-museum.dic.co.jp/art/collection/#collection07

二階には、201/202/203の3部屋があるが、いずれも広いスペースで贅沢な空間。2022年に行われていた企画展:Color Fieldsは、色に拘りを持った抽象絵画だけを展示しており、他では目にしたことがない展示だった。私設美術館ではあるが、この美術館の歴史も踏まえ、学芸員の方のレベルが高いと推測する。この企画展で発見したジュールズ・オリツキーとモーリス・ルイスは収穫だった。

https://kawamura-museum.dic.co.jp/art/

一階の110の部屋の奥には茶室があり、抹茶と和菓子をいただくことができる空間があり、建物の外は、少し歩くと、緑の芝生が綺麗な広場がある。自然に囲まれた寛げる場所だ。

尚、館内の写真撮影は禁止だった。最近は写真撮影を禁止しない美術館が増えたが、「ロスコ・ルーム」だけは禁止にし、あとは撮影可能としても良いのではないかという気がした。

2018年、2021年、2022年訪問。

基本情報

​■ 名称: DIC川村記念美術館
■ 住所 :  千葉県佐倉市坂戸631 
​■ ホームページ:https://kawamura-museum.dic.co.jp/
■ その他

  • マークロスコルームで瞑想に耽るためには、来館者が少ない平日がオススメ。週末、特に人気がありそうな企画展が開催されている週末は、できれば避けるのが賢明。
  • この美術館のアクセスについて。電車で行く場合、JR佐倉駅より送迎バスが出ている。また、東京駅からは一日一往復で京成が直行バスを出している。このバスは大型観光バスでゆったりできるので、オススメ。車を運転せずに、バスに揺られてゆったりしたあとで鑑賞するのがいいと思う。
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