カトマンズ (Nepal)

ヒッピー三大聖地の一つ。人々は優しく、寛容。これも、ヒマラヤ山脈を携えた国の​文化によるものなのか? 異境の地で、和やかな空気を感じとる。

カトマンズと聞くと、世界三大ヒッピーの聖地ということを思い出す。現在でも、この定義が通用するのかは分からないが、この三大聖地とは、アフガニスタンのカブール、インドのゴア、ネパールのカトマンズを意味していた。この三カ所の中の一つにようやく足を運ぶことができた。

まず、玄関口である空港に入って驚かされた。田舎の空港という感じ。飛行機はタラップで降りたし、入国ビザを発行する器械は、入力をしたが、最後の手順で動作が停止し、「ネットワークが悪いんですよね」と係員の人に言われて、最初から入力をやり直した。荷物を手にして外に出ると、タクシーの呼び込みの人々でごった返していて、遠い昔の体験を思い出し、懐かしい気分になった。

ヒッピーの聖地というと、60年代を想像し、ガイドブックに記載されてある、ジョッチェン通りに行ったが、まったく栄えていなかった。後で、地元の人に確認したところ、この、かつて、ヒッピーで賑わっていた場所は、警察の取り締まりが入り、廃れたということだった。ちなみに「あんた、それは、50年前の話だよ」と言われた。私は、あるガイドブックを見て足を運んだのだが、注意いただきたい。ちなみに、このジョッチェン地区を引き継いだ場所が、タメル地区である。

では、カトマンズの何がいいのかであるが、とにかく、「人が優しく、寛容である」ということだろう。街自体は、狭い路地のゴチャゴチャ感で覆われているが、店の前、レストランの前、その他、店頭に人が立っている前を歩いても誰も声を掛けてこない。「寄ってかない?」とか、「日本人でしょう?」とか、そういう類のことは一切なかった。インドに行くと、この類の呼び込みが凄すぎて、その対応に疲れてしまったりするが、カトマンズでは、それが一切なかった。個人的には、「拍子抜けした」という言葉がしっくりくるが、この点は、非常に驚きであった。

また、店やレストランでも、値切るという文化があるようには思えなかった。商品に値札が付いていないケースは多々あったが、人々がおかしな金額を故意に請求することはないように感じられた。これは、上述の「人が優しく、寛容である」ということと関連する話ではあるが、人々が誠実であるように思えた。

では、ヒッピーは存在するのか?であるが、ホテル、レストラン、店が集まる「タメル地区」には、その手の人々を散見することができた。但し、これは、地元の人ではなく、外人ヒッピーである。このエリアは、観光客が集まる場所であるが、中心となるエリアは、半径百メートルほどの範囲で、それらしき人々が闊歩しているのを目にし、夜になると、ギターを持ったヒッピー風の若者が路上で演奏をし、そこに集まった人々とやりとりが始まる光景を目にした。

さて、カトマンズでは何をするのか?であるが、とにかく、「歩き回ること」に尽きるという気がする。宗教に寛容な地であるため、仏教寺院、ヒンズー教寺院が散在しており、この手の場所を訪れるのもいいし、歩き回って、店に入って、店の人と話をしてみるのもいいと思う。ちなみに、車は、渋滞が激しかった。交差点には信号機はなく、警官が交通整理をしていたが、交差点で車が停止すると、五分は動かなかった。ただ、よく見ると、所々に動作していない信号機が立っているのが確認できた。地元の人に訊いたところ、昔、日本の援助で、信号機が設置されたが、壊れてしまい、メンテナンスをせず、そのままになっているということだった。「ハードだけでは援助にならない」という言葉を具現するようなできことだった。

タメル地区の店の人は、ほぼ確実に英語を話す。レストランに行っても全員が英語を話すので、「何故、英語が話せるのですか?」と訊くと、「この仕事の採用条件の一つなんです」という返答だったりする。これは、このカトマンズの主要産業の一つが観光産業であることも関係しているはずだ。タメル地区は、とにかく、通りに警官や警備員の姿が目に付く。地元の人に確認したところ、「観光業は、安全をアピールすることが重要なんです」ということだった。

ちなみに、夜になると少し雰囲気が変わる。タメル地区の中心街では、いろんなところから音楽が聞こえてくるのだ。音楽に引き寄せられるように、ラウンジのような店に足を踏み入れると、ローカルバンドが演奏している。音楽はロックのカバーが多かったが、80年代の曲が大勢だった。カトマンズと言うと、ヒッピーの印象が強いため、60年代から70年代の印象が強いが、音楽の傾向も少し後ろにズレたのかもしれない。勝手な推測だが、10年、20年前であれば、レッドツェペリン、ディープパープル、ジミーヘンドリックスが主流だったのではないかと思う。ラウンジは二カ所訪れたが、いずれも、来ている人が静かに演奏を聴いているのが印象に残った。訪れたのが、トレッキングのオフシーズンだったこともあるが、来ている人は、ほとんどがローカルの人であり、その空間の中で、バンドが80年代の音楽を演奏し、アルコールを口にしながら、静かに演奏を聴いているというのは、あまり体験したことがない空間であり、非常に心地良かった。

ちなみに、地元の二人にこんな質問をしてみた。
「隣国の、インドと中国はどちらが重要ですか?」
二人とも返事は即答だった。「もちろん、インド」。

インドは、好きになる人は本当に好きになる。周りにもそのような人が存在するが、インドは、私には合わなかった。そういう意味では、ネパールも厳しいかなという気がしたが、ハード的な部分というよりは、ソフトの部分で、心地良く、癖になる場所ではないかという気がした。

2019年訪問。

​基本情報

​■ 名称 : カトマンズ、ネパール
■ ホームページ : https://www.welcomenepal.com/places-to-see/kathmandu.html  
  (ネパール観光局カトマンズ)