金沢。箱型美術館の概念を最初に取り入れた館内で、ジェームス・タレルの作品を見つけ、青空を見上げる。
石川県、金沢市にある現代美術館。2004年オープン。雑誌が、日本の美術館のランキングの類を作ると、上位に来る美術館でもある。場所的な部分もあり、なかなか訪れることができなかったが、2021年、ようやく足を運ぶことができた。
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雑誌の記事などを読んで想像していたが、一番インパクトが残ったのは、ジェームス・タレルの「ブループラネットスカイ」という作品があったこと。しかも、この作品が無料であり、誰でも入れることだ。この作品は、ジェームス・タレルの十八番、建物の天井に四角い穴を開けて、空の青さを鑑賞できる空間を構成するというものだ。館内の端の方に、この作品を鑑賞できる場所があり、中に入ると、縦、横、高さ、十メートル程度のスペースがあり、天井が四角く切り取られている。地上は、壁沿いに座れるようになっており、背凭れが少し斜めった場所に腰を下ろし、天井を見上げる。私が行った時は、居眠りする人、読書をする人など様々だったが、この付近に住んでいる人にとっては、リラックスしたい時には格好の場所ではないかと思う。羨ましい限りだ。
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尚、ジェームス・タレルの同様の作品は、新潟県、十日町市に「光の館」として公開されている。この場所は、日本家屋で宿泊できるようにもなっている。ジェームス・タレルが好きな人にとっては外すことができない場所だ。
美術館の建物は、確かに変わっている。地上一階(地下一階もある)の円形の建物で、外面はガラス張りになっている。建物を一周すると、いくつか入口があるが、正面が分からない。チケット売場がある近くの入口が正面のような気もするが、入口付近の建物には、「金沢21世紀美術館」という記述がない。どうも、正面を定義しないコンセプトらしい。
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展示室は、建物の中に、箱を配置した構成になっており、大きな部屋から、5-6名しか入れない部屋までいろいろある。美術館の周りを歩くと、この建物が箱を積み上げて構成されていることが確認できる。青森県にある十和田市現代美術館を大きくした感じだろうか。十和田市現代美術館は2008年開館なので、模倣したとすれば、十和田市現代美術館の方になるので、この金沢21世紀美術館が元祖ということになる。
展示作品に関しては、現代芸術のみ、インスタレーション系、ビデオ系が主体だ。コスト的な面もあり、1980年以降の作品に限定して収集をしているということだ。恒久作品の中に、レアンドロ・エルリッヒの「スイミング・プール」があり、少し幼稚な印象を持ってしまうが、展示されている作品には「えっ、こんなの展示しているの?」というような難解な作品も見られ、この美術館の現代芸術に対する姿勢が感じ取れる。このあたりも、この美術館が評価を得ている一つの理由かもしれない。
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尚、驚いたのは、とにかく、若者が多いこと。来場している人の8割程度は、30代以下に見えた。また、この影響だろうか、館内の係員の人が、来場者の動きに神経質になっているのが感じられた(男性が複数名で来場している姿が目に付き、予測不能な動きをしそうな雰囲気を発信していた)。このあたり、どのように運営していくかは一つの課題かもしれないが、館内には、上述のジェームス・タレルの作品を含め、無料スペースが多々あり、この美術館に足を運びやすい環境にある金沢の人には、芸術に触れる素晴らしい環境がすぐ近くにある訳で、将来、刺激を受けた人の中から偉大なアーティストが現れるのかもしれない(と、ことはそんなに単純ではないと思うが)。
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2021年訪問。
基本情報
■ 名称:金沢21世紀美術館
■ 住所 : 石川県金沢市広坂1丁目2−1
■ ホームページ:https://www.kanazawa21.jp/
(described on Oct 9 2023)