ニューヨーク近代美術館 (MoMA) (New York City, USA)

​アメリカ、ニューヨークシティー。世界最高峰の近代美術館で、初めて、熱量を発する作品に出会う。

ニューヨーク近代美術館(Museum of Modern Art, New York/MoMA)は、現代美術館の最高峰といってもいいかもしれない。美術にまったく興味がなかった私をこの世界へ導いてくれた美術館である。

二十代前半、ニューヨークに行き、毎日、街を歩き回った。街を歩いていると、多くの人に道を訊かれ、時間を訊かれた。そして、私はMoMAの前を通りがかり、そこにあったミロ展のポスターとチケット売場に並ぶ行列を見て、どれだけ凄いものなのだろうという好奇心から、チケット代を奮発してMoMAに入った。ミロは素晴らしく、常設されていたダリの「記憶の固執」に驚愕し、新たな世界を発見したような気がした。

しかしながら、この二人の作品以上に響いた作品があった。ダビッド・アルファロ・シケイロス(David Alfaro Siqueiros)だ。作品名は 「心中」(Collective Suicide)。私が初めて訪れたのは、現在あるMoMAが建てられる前のものだったが、二階か三階の廊下から入った裏側に飾られていた。鑑賞している人も数えるほどで、私はその絵の前で動けなくなった。

オドロしい色彩に精緻なタッチの人間模様が描かれている絵で、全体を見回してから細部に目を奪われた。内容についての説明が書かれていた記憶はないが、その絵から政治・歴史・人の醜さ、獰猛さのような何かが蠢いているのを感じた。

中南米の歴史を理解するとき、スペインに侵略されたという事実は外せない。中南米というと、ラス・カサスの「インディアスの破壊についての簡潔な報告」とガルシア・マルケスの「族長の秋」の書物が頭に浮かぶが、このあたりのイメージと結実したことが関係しているのかもしれない。日本の美術館、また、欧州の美術館でも、ほとんど、彼の作品を見たことはないが、是非多くの人に見て欲しい作家である。

話をMoMAの話に戻そう。MoMAはニューヨークシティー(マンハッタン)の53丁目、5番街と6番街の間にある。ニューヨークシティーの真ん中(ミッドタウン)だ。ビジネス街の真ん中とも言えるが、観光客で溢れているエリアとも言える。そういう意味では、ニューヨークに観光に来て、ミッドタウンに宿泊している人からすると気軽に足を運べる場所であり、いつも混んでいた印象だ。

最後に訪れた2016年は、2004年の改築後の建物だったが、スペースが広すぎて、何故か落ち着かなかった。また、昔と比較すると、とにかく人が多くなったような気がする。気に入った作品の前で、気が済むまで、足を止めて鑑賞するという感じではなかった。

1988年、1992年、1994年、1997年、2003年、2016年訪問

​基本情報

■ 名称:MoMA (The Museum of Modern Art)
■ 住所 : 11 W 53rd St, New York, NY 10019, USA
​■ ホームページ:https://www.moma.org/

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