ニューヨーク近代美術館 (MoMA) (New York City, USA) | 最高峰の近代美術館

インパクト:★★★★☆
空間:★★★☆☆
独自性:★★★★☆

​アメリカ、ニューヨークシティー。世界最高峰の近代美術館で、初めて、熱量を発する作品に出会う。

ニューヨーク近代美術館(Museum of Modern Art, New York/MoMA)は、現代美術館の最高峰といってもいいかもしれない。美術にまったく興味がなかった私をこの世界へ導いてくれた美術館である。

二十代前半、ニューヨークに行き、毎日、街を歩き回った。街を歩いていると、多くの人に道を訊かれ、時間を訊かれた。そして、私はMoMAの前を通りがかり、そこにあったミロ展のポスターとチケット売場に並ぶ行列を見て、どれだけ凄いものなのだろうという好奇心から、チケット代を奮発してMoMAに入った。ミロは素晴らしく、常設されていたダリの「記憶の固執」に驚愕し、新たな世界を発見したような気がした。

ニューヨーク近代美術館 (MoMA)
ダリ「記憶の固執」

しかしながら、この二人の作品以上に響いた作品があった。ダビッド・アルファロ・シケイロス(David Alfaro Siqueiros)だ。作品名は Collective Suicide。私が初めて訪れたのは、現在のニューヨーク近代美術館が建て替えられる前だった。廊下の奥、目立たない場所にその作品は展示されており、鑑賞している人もほとんどいなかった。私はその絵の前で、しばらく動けなくなった。

オドロしい色彩に精緻なタッチの人間模様が描かれている絵で、全体を見回してから細部に目を奪われた。内容についての説明が書かれていた記憶はないが、その絵から政治・歴史・人の醜さ、獰猛さのような何かが蠢いているのを感じた。

ニューヨーク近代美術館 (MoMA)
ダビッド・アルファロ・シケイロス(David Alfaro Siqueiros)「心中」(Collective Suicide)

中南米の歴史を理解するとき、スペインに侵略されたという事実は外せない。中南米というと、ラス・カサスの「インディアスの破壊についての簡潔な報告」とガルシア・マルケスの「族長の秋」の書物が頭に浮かぶが、このあたりのイメージと結実したことが関係しているのかもしれない。日本の美術館、また、欧州の美術館でも、ほとんど、彼の作品を見たことはないが、是非多くの人に見て欲しい作家である。

話をMOMAの話に戻そう。開館は1929年。当初は仮施設でスタートし、1939年に現在の53丁目の場所に移転。その後も増改築を重ね、2005年に日本人建築家・谷口吉生の設計による大規模リニューアルが行われた。さらに2019年には展示空間の再編が行われている。6階建てで、ロビーは上層階までの吹き抜けになっている。

2025年に訪問した時の展示構成は、6階が企画展で、2階、4階、5階が常設展だった。実は、2016年に訪問した際は、展示構成、及び、展示内容が印象に残らなかったのだが、2025年に訪問した際に、改めてこの美術館の凄さを実感することとなった。おそらく、展示構成を変更したことと、美術館が所有する著名な作品が並んでいたことによるものかもしれない。ダリの「記憶の固執」が展示され、ゴッホ、ルソー、ムンク、ピカソ、シャガール、オキーフ、モネ、ミロ、ホッパー、ウォーホル、ポロック、ジョーンズ、リヒテンシュタイン、ジャッドと、大御所の作品が並んでいた。一周するとお腹一杯になり、満足感に包まれた。

また、冒頭に記載した、ダビッド・アルファロ・シケイロスのCollective Suicideも展示されていた。大部屋に展示された作品は、インパクトがあるのか、人々が絵の前で立ち止まり、食い入るように絵を眺めているのが印象的だった。私が前回この作品を目にしたのは、30年以上前だったが、その驚きとインパクトは色褪せていなかった。

尚、2025年訪問時には、日本人アーティストの作品も多く展示されていた。私が気付いた限りでは次の作品が展示されていた。

Miyoko Ito、Mako Idemitsu(Hideo It’s me Mama)、Kazuo Shiraga、Tomie Ohtake、 Yoko Ono(Bag Piece)、On Kawara (Date Painting)

最後に一つだけ注意事項として記載しておくが、館内はとにかく混んでいた。展示室内に自分だけというような状況は、ほぼなかった。海外旅行が一般化した今となっては仕方がないが、美術館に非日常を求める者にとっては物足りない場所になったと言えるかもしれない。ただ、この点を割り引いたとしても、所蔵作品が素晴らしいことは変え難い事実であり、NYCを訪れた際は足を運んでいただきたい。

1988年、1992年、1994年、1997年、2003年、2016、2025年訪問

​基本情報

■ 名称:MoMA (The Museum of Modern Art)
■ 住所 : 11 W 53rd St, New York, NY 10019, USA
​■ ホームページ:https://www.moma.org/
■ その他
・NYCにて、一番混雑する美術館なので、「朝一番で入る」「閉館前に入る」などの工夫が必要かもしれない。混雑時は、気に入った絵の前で好きなだけ長居できるような状況ではないことは考慮しておく必要があると思う。(カフェ、レストランもすぐには入れないケースを想定しておく必要あり)。
・時間の観点では、最低でも2時間は確保したい。近代・現代美術が好きな人は、カフェでの休憩を入れ3~4時間は確保したいところだ。
・2025年訪問時、入場時の荷物チェックがあった。荷物チェックは二回に分けて行われていた。最初、荷物の中をざっくり見て、その後、中を開けて見られた。
・荷物のクロークが画期的で、係の人に電話番号を告げて荷物を渡すやり方だった。受け取る時は、電話番号の下4桁を告げると荷物が廻って、係の人が立っている位置に移動する方式だった。