北陸、富山。秀逸なコレクションに満足し、展示室を移動すると、椅子が並ぶ壮観な光景に遭遇し、ガウディーが設計した椅子に腰をおろす。
北陸。富山駅から歩ける距離にある美術館。2017年開館。旧富山県立近代美術館。最近の開館ということもあり建物は新しい。3階建て。私が訪れた時は2階で企画展とコレクション展、3階でデザインコレクション展、瀧口修造コレクション展が行われていた。
2階で行われていたこの美術館が所蔵しているコレクション展は、その展示作品に目を奪われた。ピカソ、ダリ、シャガール、マグリット。ウォーホル。このあたりであれば、「ああっ」という感じだが、デビット・ホックニー、ゲルハルト・リヒター、大竹伸朗あたりの作品も展示しているところが、この美術館のセンスの良さなのかもしれない。特にゲルハルト・リヒターの「オランジェリー」という作品は、明るい色調の見たことがない作品で注意を引いた。
で、ここまでであれば、極めて普通の美術館と言えるかもしれない。コレクション展の質の高さは理解できたが、スペースは展示室を二つ使っただけで限られており、何か、特筆するものがあるという感じでもない。では、なぜ、ここに記事を書きたくなかったのか。それは3階にあった。
展示室5で行われていたデザインコレクション展だ。入って右側の壁に様々な椅子が展示されていたのだが、天井まで三段に構成された場所に38脚の椅子が並ぶ光景は壮観だった。その壁に並んだ展示の前には、来館者が座れる椅子が三脚並び、中央には、スペイン、バルセロナの教会、サグラダ・ファミリアを設計したガウディー設計の椅子が含まれ腰を下ろすことができる。座ったところで、係員の人がやってきて「これはガウディーが設計した椅子なんですよ」と言われ理解したのだが、ガウディー設計の椅子に座れるというのは非常に貴重だ。
「椅子は設計が難しい」という話を聞いたことがある。このあたりも踏まえ、デザイン系の美術館に行くと椅子が展示されている光景を目にすることが多いのだと思うが、この美術館の展示は38脚というスケールも含め、展示方法が優れていた。
また、3階にある展示室6では、富山県出身の瀧口修造という美術評論家がコレクションとして持っていたアイテムが、壁際に並んだガラスケースに綺麗に並んで展示されており、このあたりも見せ方という観点で印象に残った。
この美術館には屋上がある。芝生の上に遊具が並んでいるのだが、屋上から見える立山連峰の景観は見逃さないでいただきたい。私が訪れた時は雲がかかっていたが、それでも、ただならぬ景色であることは実感できた。
最後に、この富山県美術館から近くにある富山市ガラス美術館を紹介しておく。富山県美術館から車で10分程度の場所にあるこの美術館は、2015年開館。富山市立図書館が併設されたビルは、隈研吾が設計に関わっている。
壮観なのは2階から6階まで吹き抜けのスペース。天井から太陽光が入るようになったスペースには、エスカレーターが配置され、2階から6階まで見渡せる造りになっている。ガラス工芸の展示は2階から6階の各階にあり、ガラス工芸に明るくない人でも興味を持てる展示であった。特に6階で行われていた「デイル・チフーリ」のグラス・アート・ガーデンは見逃さないでいただきたい。
富山県美術館を訪れる際には、この富山市ガラス美術館も忘れずに足を運んでいただきたい。
2023年訪問。
基本情報
■ 名称:富山県美術館
■ 住所:富山県富山市木場町3−20
■ ホームページ:https://tad-toyama.jp/
(described on Sep 25 2024)