ザ・ウェーブ / バーミリオン・クリフス国定公園 (アリゾナ州)_圧倒的な畏敬の念を覚える

2022年3月の抽選方法変更に従い記事を更新しています。

難関の抽選を潜り抜けると、待っているのは道なき行程と灼熱の地。小さな冒険を成し遂げ、この世のものとは思えない非現実空間に圧倒的な畏敬の念を覚える。

ここは、ザ・ウェーブ (The Wave)として有名な場所だ。行く権利を獲得するのも難しいし、そこに辿り着くのも簡単ではない。私の印象は、これは、「小さな冒険」だという気がしている。ある程度の方向感覚と、冷静さが必要だという気がする。

この場所は、バーミリオン・クリフス国定公園(Vermilion Cliffs National Monument)の中にあるコヨーテビュート(Coyote Buttes)という荒野にある。コヨーテビュートは、北と南にエリアが分かれているが、このザ・ウェーブは北エリアに位置している。

まず、ここに行くためには権利を獲得しなければならない。その権利を獲得する方法については、一番下に記載しているので参照いただきたい。詳細は割愛するが、私は、二度、前日抽選に参加し、二回とも当選した極めて幸運な人である(逆に言うと、ここで運を使い果たしたのではないかという気もする)。一回目は、初日の抽選で、二回目は、二日目の抽選で当選した。抽選に当たる確率は、二回とも10%程度だった。それでも、当たるぐらいだから、これは、極めて幸運だったのだと思う(私が参加した抽選は、2022年3月以前の旧方式です)。

当選すると、ザ・ウェーブヘトレッキングができるが、一回目の訪問時は、ザ・ウェーブのある、地層が奇麗にうねった場所には辿り着くことができず、違う場所を、「ここが、ザ・ウェーブなのではないか?」と思い、戻って来てしまっている。しかも、その初回のトレッキングでは、帰り道に迷い、かつ、日が暮れそうな状況になり、遭難したのではないか、という状況にまでなっている。

トレッキングに際しては、写真付きの地図が配られ、レンジャーの人から説明を受けるのだが、実際に歩くと、その難しさを理解できるはずだ。二回目は、一回目の翌年に、最後まで辿りつくことができたが、ある程度のトレッキング経験と、地図と地形が読めるスキルは必須だと思う。

さて、注意事項ばかりを書いてしまったが、この場所について記載しようと思う。この場所は、トレッキングのスタート地点から歩いて2時間程度かかる。私が歩いたのは5月初旬だったが、日中は相当暑かった。確実に40度は超えていたはずだ。歩いている人は、抽選に当選した人だけであり、ザ・ウェーブに辿り着くまでは、誰とも会わないこともありうる。しかも、トレッキングと言いつつ道はない。レンジャーから渡された写真入りの地図を見ながら進んで行くしかない。もちろん、携帯の電波は入らない。周りには茶系の奇岩が点在し、似たような風景なので、地図と写真を見ていても、方向を誤る可能性がある。

少し方向を誤って進んでしまうと、地図を見ても自分がどこにいるのかわからなくなるため、とにかく、地図に書かれた場所まで引き返す必要があるだろう。根拠のない自信は、ここでは脇において欲しい。次の3枚の写真が、ザ・ウェーブへ向かう途中の景色だが、これを見てどう思われるだろうか? 人がいない、道がない場所を地図を頼りに進む。やはり、「小さな冒険」の領域に入るのではないだろうか。

基本的には、写真入りの地図を見ながら歩けばいいのだが、「周りに人が居ない」「未知の場所」「道がない・道しるべがない」「とにかく暑い」という条件が揃うと冷静な判断ができなくなる可能性が高い。私が一回目に最終目的地であるザ・ウェーブへ辿り着くことができなかったのは、この「冷静な判断」ができなかったことによるものだ。写真入りの地図に記載されてあった鍵となる文章を読んでいたはずが、上述の環境より、記憶から抜け落ちたのだ。そこで、冷静さを保ち、その鍵となる文章を読み返し、状況を判断できていれば、ザ・ウェーブまで辿りつけたような気がする。尚、文章は英語なので、英語を読んで理解できるスキルは必須になる。

また、私が初回に訪れた時の盲点は、トレッキング開始が昼過ぎだったため、多くの人が、既にトレッキングを終え、戻って来ている状況だったことだ。ザ・ウェーブ付近では誰とも擦れ違わず、方向を確認できなかったのだ。この誰にも会わないというのは、既知の場所であれば何とも思わないが、知らない場所では、恐怖心が大きくなる。

最終目的地のザ・ウェーブは言葉にならない素晴らしさだ。その場所は、岩山の窪みにあるので、この世のものとは思えないその光景は、突然目の前に現れる。そして、その光景に驚愕し、見知らぬ場所を2時間かけて歩いてきた努力が報われることになる。今では、ウェブなどで写真を見ることができるが、この場所は、本物を自分の目で見ておくべき場所と言えるだろう。

The Wave (PIXTA :72025434)
写真素材のピクスタ

尚、訪問者は一日最大64人だが、多くの人は複数人で来ているため、一日にこの場所を訪れるパーティーは、10~15程度になると思う。この程度の数なので、エリアに人が密集することはなく、好きなように徘徊できるが、逆に誰もいないと、パーティー全員で記念撮影ができないので、対策を考えておく必要がある。

対策としては、とにかく早く行くこと。早く行けば、あとから人が来るので、写真を撮ってもらえる。これが、午後遅くに行くと、誰もいなかったりして(これは、これでいいかもしれないが)、写真を撮影してくれる人がいない可能性が高い。三脚を持っていくのも解になるが、私が持参した三脚は、岩場の上では安定せず使えなかった。

尚、このザ・ウェーブの場所に至る途中に素晴らしい景色が何カ所かあるので、気に入った場所で休憩し、景色を楽しんでいただきたい。私は、道程にある、地層が施された、円錐状の岩山が二つ並んでいる場所が記憶に焼き付いている(地図は、この場所をTwin Buttesと記載している)。

この公園は、是非、入場制限を続け、環境を保持して欲しい。また、繰り返しになるが、ザ・ウェーブへの行程は「小さな冒険」の領域に入るので、体調を整え、準備を怠らずに臨んでいただきたい。少なくとも歩いて来た経路がトレースできる機能が付いたGPSは持参することをお勧めする。

ちなみに、一回目の挑戦時に、出発地点にあるレジストレーションボックスに記載されていた、前日当選した日本人の方の名前の横に書かれた時刻は、インが10:00でアウトが12:28とあった。ザ・ウェーブは往復だけでも4時間はかかるので、おそらく、途中でこのトレッキングの難しさを実感し、戻られたのではないかと推測する。

是非、この「小さな冒険」を成し遂げてもらえればと思う。間違いなく、強烈な記憶を残してくれるはずだ。

2008年(未到着)、2009年訪問

​基本情報

■ 名称:ザ・ウェーブ /バーモントクリフ・ナショナルモニュメント、ノースコヨーテビュート
■ 住所 : アメリカ、アリゾナ州
​■ ホームページ:   https://www.thewave.info/

​■行き方・その他:

  • 飛行機でラスベガスまで来て車で入るのが現実的。ウェブ抽選に当たったあと、ザ・ウェーブへ行く前日に許可書の取得及び説明会が行われるカナブ/Kanabの町まではラスベガスより約200マイル(320㎞)。車で約3時間から4時間。尚、カナブ以外にもページ(町の名前)でも許可書の取得及び説明会が行われるということだ。
  • カナブから、North Coyote Butte, The Waveへのトレッキング入口となる、Wirepass Trailhead の駐車場までは、約50マイル(80㎞)。車で約1時間。
  • Wirepass Trailheadは、カナブから延びる国道89号線を東に約40マイル(60㎞)走り、House Rock Valley Junctionから南に入る未舗装道路を約8マイル(約13㎞)走ったところにある。尚、この未舗装道路は、クレイ状の地面で、状態が悪い時もあるので、車高の低い車はオススメしない。
  • The Waveのポイントは、Wirepass Trailhead から歩いて約2時間。許可証がないとトレッキングはできない。このあたりは、サイト保護の観点からも順守する必要有り(見つかると罰せられる)。
  • 許可証の取得方法などについては、次のページを参照。https://www.blm.gov/programs/recreation/permits-and-passes/lotteries-and-permit-systems/arizona/coyote-buttes
  • ラスベガスから入る場合、途中でザイオン国立公園に寄ることも考えられるが、この場合には、ザイオン国立公園付近で、一泊することをお勧めする。
  • 最後にこの「小さな冒険」を成し遂げるために必要な準備・スキルなどを整理し列記しておきます。尚、2024年12月時点のウェブサイトの説明によると、過去5年に5人が亡くなっていると書かれてあります。
    ・水・食料(当選したら、レンジャーの人のアドバイスを受け、従うこと)
    ・トレッキング経験
    ・体調を整えておくこと
    ・歩いてきた道程をトレースできるGPS
    ・地図を読む力
    ・英語力(道を訊く時、地図に書かれた文章を読む時に必要)
    ・冷静な判断力
    ・午前中の早い時間にトレッキングを開始すること

■ 2022年3月以前に実施されていた抽選方法との比較

 2022年3月15日以前2022年3月15日以降
1日に訪れることができる人数20人64人
抽選方法・ウェブでの事前抽選 : 10人
・現地での前日抽選 : 10人
・ウェブ抽選(3カ月前):48人 (Max:16グループ)
・ウェブ抽選 (2日前):16人 (Max:4グループ)
  • 私がWaveを訪れたのは2008年と2009年でしたが、その時行われていた抽選方法が2022年3月に変更されています。上記が、変更前後の比較表です。変更後は、前日に現地で行われていた抽選はなくなっています。私は、変更前の抽選に3回参加しましたが、大勢が集まり熱気で溢れていました。個人的には、人が集まり抽選をする形式は、The Waveが特別な場所であることを改めて実感できるプロセスだったという気がしています。
  • 尚、方式が変わる前は、1日に訪れることができる人数は20人でしたが、変更後は1日64人になっています。単純に人数が増えていますが、サイト保護の観点では、この判断が良かったのかどうかは疑問が残ります。ただ、変更後は、グループ数に制限が加えられています。これは、変更後の2日前のウェブ抽選で、1人で応募した人が、4組当選した場合は、4人しかThe Waveには行けないことを意味します。つまり、変更後もグループ数に制限を加えることにより、実質、64人が訪れるケースは少いという判断をしたのだと想像します。私は抽選に3回参加していますが。多くの当選者は2~3人のグループだった記憶があります。1人の人もいましたが、4人以上のグループは少なかったと思います。

■【参考】旧抽選方式時の記事/2019年4月30日記述

  • 抽選は、一日で当たる確率は非常に低いので、抽選に当たるためには、カナブの町に長期滞在する覚悟が必要だ。また、私が訪れた二回の前日抽選では、連続して抽選に参加する人は、複数の番号をもらえたが、下記にある2010年のYouTube動画を見る限り、複数の番号はもらえていない(現在の抽選では、一つのパーティーに一つの番号しかもらえないが、昔は、一日目の抽選で落選すると、翌日の抽選で番号が二つ、二日目も落選すると、その翌日の抽選で番号が三つもらえた。すなわち、当選確率が上がっていった)。私が最後に訪れたのは、2009年だが、この後、ルールが変わったのかもしれない。この場合、連続して抽選に参加しても、当たる確率は高くならないので、余裕を持ったスケジュールが必要になる。https://www.youtube.com/watch?v=YeTwPO9Yv4Y
  • YouTubeを見ると、ある日の抽選に参加したパーティーは38。これに対し、当選したパーティーは4。パーティーの比率で見ると当選確率は約10%。また、他のYouTubeを見ると、参加したパーティーはおそらく96。これに対し当選したパーティーは4。当選確率は4%程度。この数字から見ても当選することが簡単ではないことが分かる。
  • 抽選が行われる会場は、現在は、カナブの町にある Grand Staircase-Escalante National Monument Visitor Centerとなっているが、以前は、国道89号線のWirepass Trail Headに向かう、House Rock Valley Junction 近くのVisitor Centerのような場所で行われていた。