荒野の中を歩きながら吹きすさむ風を受け、木の化石を目にすると、この大地が辿ってきた壮大な歴史の流れが刻み込まれる
アリゾナ州北東部にある国立公園。少し東に走るとニューメキシコ州。インターステート40号線沿いの荒野にある。ここは、珪化木(ケイカボク)と呼ばれる植物の化石が大地に残っている場所だ。日本語では「化石の森国立公園」と呼ばれることが多く、アメリカ国立公園の中では、珍しい種類の場所だ。

この場所だが、アリゾナ州とユタ州にある所謂グランドサークルに属する国立公園とは少し距離があるため、アクセスに時間がかかる。そのためだろう国立公園巡りをする際、スケジュールから外されることが多い国立公園でもある。しかしながら、他の国立公園では見られない光景を見ることができる貴重な場所だ。

入口は二か所。インターステート40号線側と、近くにあるホルブルックという町から南東に伸びる180号線側だ。この二か所を南北に走る園内を走る道路がある。この道路沿いにトレイルがあり、木の化石が点在する風景を見ることができる。
公園内にあるトレイルは6箇所。いずれも数百メートルから二キロ以下の距離で、起伏も激しくないため容易に歩くことができる。下記、私が訪れた代表的なトレイルを3つ紹介したい。
■ ブルーメサ/Blue Mesa(一周:1.6km)
ペインティドデザート/Painted Desertの中を歩く。少し起伏のある台地に青、紫、灰色の地層が形成されている。もともとは、化石の森国立公園の外だったが、編入されたとのことだ。似たような場所としては、バッドランズ国立公園、あるいは、デスバレー国立公園にあるアーティスト・パレットが近いだろう。
この場所は、地層が形成された台地の中をトレイルが走っている。珍しい場所なので楽しめるだろう。尚、木の化石はところどころにあったが目立たなかった。このトレイルでは期待しない方がいい。


■ クリスタルフォレスト/Crystal Fores(一周:1.2km)
荒野に木の化石が点在している。この国立公園のメインの場所だろう。絵になる場所が点在している。写真を撮るのであれば、このトレイルが一番オススメ。尚、木の化石のサイズはジャイアント・ログス/Giant Logsと比較すると小さめだが、荒涼とした大地に木の化石が点在する不思議な光景を目にすることができる。



■ ジャイアント・ログス/Giant Logs(0.6km)
名称の通り、大型の木の化石が集中している。虹の森博物館/Rainbow Forest Museumという建物があり、その裏手にあるトレイルに大型の化石がゴロゴロしている。トレイルの奥まで行く必要もない。この場所は、国立公園の一番南にあるが、この国立公園を見ている時間が非常に限られている人は、180号線から入り、この場所だけを見て移動するというのがいいかもしれない。


国立公園周辺は見渡す限りの荒野。1回目の訪問は12月、2回目の訪問は5月だったが、いずれも風が強かった。訪問する人も限られており、荒野の中を歩きながら吹きすさむ風を受け、目にしたことがない木の化石を目にすると、この大地が辿ってきた壮大な歴史の流れを想起することができる。他の国立公園にはない情感が喚起されるかもしれない。
尚、人里離れた場所ではあるがショップなどは充実している。インターステート40号線側には、国立公園が運営するショップとレストランがあり、180号線側にも道路の両側に私営ギフトショップがあった。是非立ち寄っていただきたい。
最後に、この化石の森国立公園周辺の見どころとして二か所を紹介しておく。いずれも興味深い場所なので、是非立ち寄っていただきたい。
ホルブルック/Holbrook
化石の森国立公園から西へ40km程度の場所にある町。ルート66が通る町として知られている。一番有名なのは、ウィグワム・モーテル/Wigwam Motelという先住民の人々によって使用されていた円錐形の住居の形状をした建物(ティピ/Tipi)に泊まることができるモーテルだ。現在のモーテルは1988年開設。


ルート66を紹介する本や写真集には、このウィグワム・モーテルの夜のネオンサインが映る光景が必ず登場するといってもいいだろう。

尚、最初にこの町を訪れたのは2001年だったが、2024年に訪れた時の印象は、残念ながらルート66を感じる場所は減ってしまったというものだ。町の中心にある店も建物が老朽化し、営業していない場所が目に付いた。ただ、上述のウィグワム・モーテルは、特異な場所であり、ルート66が好きな方は、是非、立ち寄っていただき、できれば宿泊してみていただきたい。

メテオ・クレーター
ホルブルックからインターステート40号線を西へ100km程度走った場所にあるクレーター。約5万年前に地球に衝突した隕石によって形成されたクレーターだ。そのサイズだが、直径約1.2km、深さ170m。このサイズだが、参考までに富士山のクレーターが、直径800m、深さ240mなので、直径で富士山の約1.5倍の大きさだ。

個人的には、富士山の頂上のクレーターを見た時も相当なインパクトだったことを覚えているが、このメテオクレーターも、その規模の大きさに圧倒された。クレーターの周りが見渡す限りの荒野で、この広大な荒野にクレーターが存在する光景が異質に見えることも圧倒された要因かもしれない。

クレーターは、高台から見下ろすことがきるようになっている。時間がある方は、是非足を延ばしていただきたい。
尚、私は2001年と2024年に訪れているが、2024年は付属する設備が大きく変貌していた。2001年にはギフトショップがあるぐらいだったと記憶しているが、2024年訪問時には、新しい建物ができており、建物内にはレストランのみならず、4Dの体験型シアターまでできていた。何やら商業化されてしまっていたのだが、この変化は、クレーターの広大さとインパクトを少なからず軽減させたような気がする。

観光地ではよくある話だが、自然に囲まれた場所に人工的な設備を作ることより、その場所が持つ本来の良さを失わせている、そういう場所の典型のような気がした。尚、この設備増設にあたり、入場料は法外な料金(一人:29US$)になっていた。
2001年、2024年訪問
基本情報
■ 名称:化石の森国立公園/Petrified Forest
■ 住所 : アメリカ、アリゾナ州
■ ホームページ:https://www.nps.gov/pefo/index.htm
■ 行き方・その他
- この場所は、アクセスが難しい。近い都市は、アリゾナ州フラッグスタッフ、アリゾナ州フェニックス。このどちらかの都市に飛行機で入りレンタカーを借りるというのが現実的だろう。あるいは、ニューメキシコ州アルバカーキに飛行機で入るというのもある。
- 他の国立公園との組み合わせというのも計画が難しい。考えられるのは、グランドサークルを廻ってから、この化石の森国立公園を訪れるというケース、もう一つは、キャニオン・ディ・シェイ国定公園と組み合わせるケースだ。個人的には、キャニオン・ディ・シェイ国定公園は是非訪れて欲しい場所なので、ニューメキシコ州のアルバカーキと組み合わせて計画するのがオススメだ。
- 距離・時間
・フラッグスタッフから100マイル(160㎞)、約2時間。
・フェニックスから160マイル(260㎞)、約2時間半。
・アルバカーキから200マイル(320㎞)、約3時間。
(described on Mar 23 2025)
