オレゴンカントリーフェア (Eugene Oregon, USA)

アメリカ、オレゴン州。ヒッピー文化を継承する祭典で、非現実的な光景を目にし、人生観が変わった自分がいることに気付く。

アメリカ、オレゴン州の街というとポートランドが有名だが、二番目に大きな街にユージンがある。このユージンは、ヒッピー文化が根付いている場所として知られている。オレゴン大学があり、若者が多いことも関係しているのだろう、リベラルな人が多く住んでいる場所でもある。

1980年代の後半、私は、数カ月この街に滞在したことがあるが、人々は明るく自由な印象。ヒッピーを地で行くような人も存在した。2019年に再訪した時も、街中を歩いていると年輩のヒッピールックの男女のカップルやウクレレを背中に背負って歩いているヒッピールックの若者を見かけたりした。ダウンタウンでは、サタデーマーケットが行われ足を運んだが、敷地内でギターを弾いていたり、バイオリンを弾いていたりする人の姿を見ていると、やはりリベラルな空気が流れていることが実感できる。

また、2007年にダウンタウンを歩いていると二人に声を掛けられた。一人目は中年の男性で「私はポートランドから来て、困った問題に直面しているのだが、できればここに車の部品があるので買ってくれないか?」と言われ、二人目の中年の女性には、道を訊かれた。この二人の間は五分程であり、ユージンの街では、あまり見かけない東洋人に普通に声を掛けてくるところが、この街のリベラルさを表しているのではないかという気がした。

さて、このヒッピー文化を体感できるイベントが毎年7月にユージン郊外で行われる。オレゴンカントリーフェアだ。最初、2007年に訪れた時、このようなイベントがあることに驚かされた。このイベントは森の中で行われるのだが、その森の中にスペースが点在し、そこで、音楽、ダンス、スピーキングなどのイベントが行われ、路上に沿って屋台が並ぶ。

このイベントに驚いた理由は、まず、来ている人の多くがヒッピールックであることだ。サイケデリックな衣装の人、このフェアのシンボルである天使の羽根を背中に付けた人、タイツ姿の人、ほとんど裸の人。加えて、多くの人が裸足で歩いている。おまけに男性の多くは上半身裸で、女性でも上半身裸の人が歩いていたりする。最初、会場に足を踏み入れて歩きながらこの光景を目の当たりにした時、頭がクラクラした。日本で普通に生活をしている私からすると非日常空間そのものだったからだ。

会場内、いや、森の中には多くのイベントスペースがある。特に印象に残ったのは Drum Towerという場所だ。人が30人程集まれば一杯になるようなスペースに観客席が配置され、その観客席及び周辺にドラムを抱えた人が座り、思い思いにそのドラムを叩き、中央のスペースに集まった人が踊っている。中には狂乱している人もおり、テンションが上がってくると十人以上いるドラムを叩いている人のパワーが増大する。ドラムを叩いている人は自由参加のようで、空間が盛り上がってくると外からドラムを抱えた人が入って来てドラムを叩き始める。ちなみに、この場所はいつ訪れてもドラムの音が聞こえる。つまり、一日中誰かがドラムを叩いていることになる。

もう一つ、Sprit TowerというスペースがありSpoken Wordというイベントが行われていた。自由にスピーチを行うというものだが、観客の中から声が上がってやりとりが始まったり、拍手が沸き起こったりする。内容は新しい投票制度の話だったり、新たなセラピーの取り組みについてだったりしたが、観客と普通に会話が始まるところがリベラルな気質を持った場所と言えるのかもしれない。

路上を歩いていると「Dismantle White Supremacy」と書かれた垂れ幕や「No Smart Phone、No 5G」というような看板を持った人が歩いていて、はっとさせられたりするが、一方で、歩いていると、突然知り合いに会って、ハグをしている光景を見かけてほっとする。

音楽はいくつかステージがある。グレートフルデッドのカバーバンドが演奏していたり、歌ではなく音楽の演奏を背景にスピーチをしたりというようなステージもあった。また、路上脇では数人編成のバンドが即興で演奏を始め、周りに人が集まってくる場所もあり、素敵な空間に遭遇できる。

実は、2019年に訪れた時には、最初に訪れた2007年に比べると、裸足の人、裸の人の率が減ったような印象を受けた。さすがに10年過つと変わるのかもしれないが、それでも、まだまだヒッピー文化をベースとした気質は残っている稀有な場所である。

大袈裟な言い方をすると「人生観が変わる」。そういうイベントだ。是非、足を運び、非日常空間に足を踏み入れていただきたい。

2007年、2019年訪問。

基本情報

​■ 名称:Oregon Country Fair
■ 住所 : 24207 OR-126, Veneta, OR 97487, USA
​■ ホームページ:https://www.oregoncountryfair.org/