日本が生んだコンセプチャルアートの先駆者、河原温の日付絵画を前にし、自分の過去の記憶に思いを巡らせる。
河原温。1950-60年代から活動していたコンセプチャル・アートの先駆者。日本よりも世界的に名が知られている人だ。一番有名な作品は「日付絵画」。長方形のキャンバスに制作した日の日付を描くというものだ。コンセプトは、その日の深夜12時までに完成しなければ廃棄すること、日付は制作した場所の言語で記載すること。
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この日付絵画は、1966年から2013年まで50年弱描き続けられた。河原温は2014年に亡くなっているので、直前まで制作していたことになる。一年間に50枚製作していたとすると、3000枚程度が存在していることになる。尚、一日一枚という制約はなく、複数枚製作している日もある(ただし、最大3枚までというルールはあったらしい)。
この作品は、世界中の美術館で目にする。たいてい、展示されているのは1枚、多くても3枚程度のことが多いが、他の絵画作品の中に見つけるとこの日付絵画の周りだけ空気が変わっている感覚を覚えてしまう。私は、絵画に書かれた年号と日付を確認し、その時自分が何をしていたか、どういう時期だったのかに思いを巡らせることが多い。日付は、その時に存命している限り誰もが必ず通過している訳で、鑑賞する人全員が共有できる時空間と言え「普遍性」のある作品と言えるだろう。
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私は、自分の誕生日の作品をスウェーデン近代美術館で偶然見つけたのだが、その時の衝撃は忘れられない。河原温に対する思い入れがあったことも多分に関係しているが、ある芸術家が、自分が生まれた日に作品を生み出していた事実があることに感銘を受けてしまう。そう、このプレートに書かれた日付は、まさにその時間に生み出されたのだ。単に、プレートに日付を記載したのとは訳が違う。これが、この作品の価値であり、これがすべてなのかもしれない。
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ここでは、私が今までに訪れた美術展で鑑賞した日付絵画の日付を列記する。基本的には、訪れた美術館が保持している日付絵画である。企画展が行われ他の美術館から借りてきた、あるいは販売されていた日付絵画については注釈をつけている。
もし、自分の誕生日を見つけた方は、是非、鑑賞していただきたい。尚、購入するという選択肢もあるが、販売価格を記載しているものもあるので参考にしていただきたい。
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著者:宮内勝典がニューヨークにいた時の話が書かれた本。1960年代の話のようだ。そのニューヨークにいた時に、ニューヨークで活動していた河原温と出会ったことについて書かれてある。また、最初の出会いは、著者がメキシコシティーにいた時とある。
尚、本に出てくる名前は「河名温」となっている。単なる間違いだと推測するが、河原温の家で、河原温の奥さんと夕食をとった場面が書かれてあるぐらいなので、間違いではないのかもしれない。このあたりも含め、河原温は、人物像が知られていないアーティストだったため、この本に記載されてある内容は、河原温という人物を知る上でも非常に貴重だ。
河原温に関する記述は、第7章に書かれてある。
(described on Mar. 21 2023)
(latest update on Dec 3 2024)