ロンドン中心街の地下、警備員との格闘の末、ダイブする観客を見ながら、ロック文化の神髄を体感する。
ロンドンはロック音楽の本場であり、数々のライブハウスが存在する。古いものに価値を見出す文化が根付いていることもあるのか、歴史を感じさせる造りの場所が多い。煉瓦造り石造りの建造物が多く、少し箱が大きくなると中世風のバルコニー席が付いていたりして、その内装だけ見ているとクラシック音楽オペラが演じられる雰囲気の場所だったりする。このような場所でロック音楽を聞いていると、不思議な感覚に覆われる。
さて、このマーキークラブ / Marquee Clubだが、ロンドンのロック文化形成に多大な影響をもたらした場所だ。1958年にオープンしているが、その後二度場所を変わっている。私が足を運んだのは1990年。地下鉄のトッテナムコートロード(Tottenham court road)近くに位置していた最後の場所だ。私はロンドンにおける70年代80年代のロック黎明期・全盛期の凄さについてはよく分からないが、メディアと人伝えでこのライブハウスの噂を聞いて訪れたときの衝撃は忘れられない。
私が訪れたのは1990年。とにかくこのライブハウスに入るという目的で訪れたところ、ライブハウスの前には数十メートルに渡り行列ができていた。入れるかどうか分からないもののとにかく列に並び、何とか中に入ることができた。演奏していたのは “The Almighty”。私はこのバンドを知らなかったが、結構名の知れたバンドであり、何年か後来日している。
実は、このバンドが凄かったという印象は薄いのだが、それ以上に衝撃だったのは初めてライブでダイブを見たことだ。満員の店内で演奏が始まると、ステージ前に立っている屈強なセキュリティーの隙を縫ってステージに上がろうとする観客がいるのだが、セキュリティーが、その観客をステージに上がってこないように乱雑に扱うのである。
その様子は今まで目にしたことがない光景で、そのやりとりばかりに目がいっていた。セキュリティーの間隙を縫ってステージに上がることができた観客は、ステージからダイブをするが、それを受け入れる観客と、ひと悶着あり、途中から笑いが込み上げてきた。
当時の日本(東京)では、ライブと言えば、中野サンプラザ、渋谷公会堂、東京厚生年金会館のような椅子があるホールが一般的で、目黒鹿鳴館のような小さなライブハウスさえも椅子が設置されていた。まだ「音楽は椅子に座って聞くもの」という不文律が存在していた時代で、オールスタンディングのライブハウスは皆無に等しかったため、このマーキークラブで展開された光景は衝撃だった。
このライブハウスは、その後閉店し、名前を”Astria”に変え営業を行っていたが、2018年現在営業はしていない。
私にとっては、ライブハウスの凄さを最初に教えてくれた場所であり敬服に値する。
1990年訪問
基本情報
■ 名称:Marquee Club
■ 住所 : 105 Charing Cross Road, London UK
■ 演奏したミュージシャン:
The Rolling Stones, Led Zeppelin, The Who, King Crimson, Yes, The Jimi Hendrix Experience, Pink Floyd, David Bowie, The Clash, The Police, The Cure, Dire Straits, Def Leppard, Iron Maiden, Metallica
(described on Dec 30 2018)
(latest update on Jan 24 2020)