ペルーの奥地、マチュ・ピチュ。世界遺産の中で抜群の知名度を誇る場所で、インカトレイルを歩いて空中都市に辿り着き、感動に覆われる。
ペルーにある世界遺産。インカ帝国の一都市として存在した場所で、空中都市として知られている。人は住んでいない。あくまでも遺跡である。世界遺産の中でも、知名度は高く人気がある場所だ。
場所は、クスコの街からさらに奥地に入った場所にある。行き方は、麓にあるマチュ・ピチュタウンまで電車で行き、そこからバスで山を登る、あるいは歩いて入ることになる。電車はクスコからも出ているが、なぜか、多くの電車はクスコから少し奥に入ったオリャンタイタンボという駅から出ている。クスコから電車で乗れれば簡単だが、多くの電車がオリャンタイタンボ駅から出ているため、クスコからオリャンタイタンボまでは車で移動になる。
マチュ・ピチュは、個人では行くことができない。ガイドの手配が必要だ。従い、旅行会社のツアーに参加することになる。私はローカルのツアーに参加した。ローカルツアーを見ているといろいろある。マチュ・ピチュは、インカトレイルと呼ばれる山道の終点に位置している。そのため、このインカトレイルを歩いて入るというツアーが存在する。2日、4日、7日などいろいろある。例えば、4日というのは、マチュ・ピチュの手前のあるポイントからインカトレイルを4 日間(3泊)歩き、マチ・ピチュに入るというものだ。このインカトレイルも、個人で入山することができない。ガイドが必要だ。また、入山できる人数も決まっているため、場合によっては、参加できないこともありうる。
さて、私はインカトレイルを1日歩き、マチ・ピチュに入るツアーに参加した。電車で、マチ・ピチュの手前で降ろされ山に入った。電車を降りたポイントはkm.104という線路上で、そこから未舗装の山道を歩き始めた。ちなみに、電車はレトロな感じがする、電車というよりも汽車と呼ぶのが相応しい感じだ。クネクネした山道を走るため、速度も非常に遅い。最大速度、時速30㎞という感じだ。
インカトレイルは、最大標高4200m。私が参加したツアーは最高標高を過ぎた地点より開始していたため最大標高2700m。基本的には歩きやすい山道なのだが、時々、厳しい登り坂があるので、ある程度の体力が必要だと思う。私が参加したツアーは朝8時から歩き始め、マチ・ピチュに到着したのは午後3時頃だった。所々で休憩をしてくれるので何とかなったが、中盤の登り坂はきつく、標高の高いクスコに入って3日目ということもあり、まだ高地に慣れていないこともあったのか、呼吸が激しく乱れ、非常に苦戦した。
このトレイルのハイライトだが、マチ・ピチュが突然目の前に現れる「太陽の門」だ。このポイントは、高台から遠くにマチ・ピチュを見渡せる絶景ポイント。インカトレイルを歩いていると石段の急勾配があり、その石段を5分程かけて攀じ登るとその絶景が眼の前に訪れる。ここまで休憩を入れて6時間程歩いていたため、その絶景が眼の前に現れた時には、涙が出るほどの感動であった。
このポイントでは、山の麓からマチ・ピチュの遺跡まで続いているバスが通る道路を見渡すことができる。この道路がくねっている光景は見逃さないで欲しい。この絶景ポイントから遺跡までは緩やかな下り道が続く。道路脇にアルパカが草を食んでいる。
マチ・ピチュで一番有名な風景の一つに、先の尖った山を背景に、その前を雲が流れていくのがあるが、この景色を見ることができる。この風景を前にすると、現存する空間ではないような気分がしてしまう。メディアでよく目にする風景であったが、実物は想像以上のインパクトだ。尚、この山は「ワイナ・ピチュ」と言う。「マチュ・ピチュ」ではない。
一つ、想定外だったのは、非常に人が多いということ。写真を撮っていると、必ず、風景の中に人が映りこんでしまう。個人的には、もっと隔離された訪れている人も限られた場所というイメージを持っていたのだ。また、遺跡の敷地内は、通路も非常に整備されており、この点も、抱いていたイメージとは違っていた。
インカ帝国という響きは、何故か、興味をそそられる。それは、卓越した建築技術を持っていたり、高度な天文学を保持していたためだが、この帝国が栄えたのは、1200年から1500年の話であり意外と最近だったりする。日本で言うと鎌倉から室町時代なので、この時代の寺社仏閣を訪れている感覚に近いのかもしれない。
個人的には遺跡にはそれほど関心がないため、メディアで目にする場所を自分の目で確認することが目的だったが、少し手前より、苦労して5-6時間歩いてマチ・ピチュに入るというプロセスが、この場所の特殊性を一段上のレベルに押し上げてくれたのではないかという気がする。
今では、有名観光地に行くことは簡単になったが、そこに向かうプロセスを工夫することより、産み出される感動を増幅できる気がする。
ちなみに、ツアーガイドの方は、寡黙で優しい男性で山男を象徴するような方であった。おそらく、日本人の女性のツアーの方からもらったと思われる日本語で書かれた「愛してる」と書かれたレターの写真を私に見せながら「これって何て書いてあるの?」と訊かれたのだが、男の私から見ても、同性として惚れてしまうような方だったので、「そりゃあ、そうだろうなあ」と思った次第である。
最後に、これはクスコの広場で会って話をした、お土産を売っていた女性との話では、「マチ・ピチュ? 私は行ったことはないわよ、だって高すぎるでしょう。あそこは、観光客が行くところなのよ」と言われた。確かに、マチ・ピチュの遺跡には、海外から訪れた人が大勢のように見えた。観光地を地元の人以外の多くの人が訪れることより、文化遺産が痛んでいく、あるいは、文化が変化していく側面はあるだろう。この是非については考えさせられることがあるが、少なくとも、訪れる人はローカルの人々をリスペクトすることが、最低マナーなのだろうという気がする。
2019年訪問。
基本情報
■ 名称:マチュ・ピチュ(Machu Picchu)
■ 住所 : Machu Picchu, Peru
■ ホームページ:https://www.machupicchu.gob.pe/?lang=en
■ その他
・遺跡には、登山ができる山が二つある。一つは「ワイナ・ピチュ山」、もう一つは「マチュ・ピチュ山」。実は、写真で目にする有名な山は「ワイナ・ピチュ山」。「マチ・ピチュ山」は、遺跡越しに「マチ・ピチュ山」を見た時に背後にある山。いずれも登山が可能だが、予約が必要。特に「ワイナ・ピチュ山」は人気があるので、相当前にツアーの予約をして、オプションで申し込む必要がある。
・マチ・ピチュ遺跡の麓には、マチ・ピチュという町がある。遺跡へバスで向かう時の出発点となる町だが、レストラン、ホテル、バーが並ぶ、日本で言うと温泉街のような雰囲気で落ち着く場所なので、ここで宿泊して徘徊するのもオススメ。
(described on Mar 24 2024)