ロサンゼルスのロック系ライブハウス (Los Angeles, CA, USA)

アメリカ、ロサンゼルス。ロンドンと並ぶロック文化の中心地で、様々なライブハウスを巡り、ロック文化が形成された歴史を垣間見る。

ロック音楽で思い浮かぶ街は、ロンドンとロサンゼルスだ。ロンドンは、現代ロックのベースを創ったレッドツェッペリンが活躍した70年代前半のイメージが強いが、年代が少し古いということもあり、個人的には、ロサンゼルスに愛着が湧いてしまう。

ロサンゼルスでロックが開花したのは70年代後半のバン・へ―レンがデビューしたことがきっかけだった。80年代に入り、モトリークルー、クワイエットライオット、ラット、グレートホワイト、ドッケン等のグラムメタル系、ハードロック系バンドがシーンに現れたが、これらのバンドが活動を始めた舞台が、ライブハウスが集まるサンセットストリップだった。

80年代後半にシーンに現れたガンズ&ローゼズもサンセットストリップのライブハウスから出てきたバンドであり、その後、90年代に入ると、グランジ系のバンドに主役を明け渡した。震源地もロサンゼルスからシアトルに移ったようにも見えたが、個人的には、やはりロサンゼルスが、ロック音楽の中心だった。

サンセットストリップ(Sunset Strip)には、老舗である ウィスキー・ア・ゴーゴー/ Whisky a Go Goロキシー / The Roxy の他に バイパールーム / The Viper Room があり、かつては ロキシー の西側に ギャザリーズ / Gazzarri’s というライブハウスも存在した。私が通い始めたのは91年からで、その時は既に80年代の グラムメタルブームは終わりを向かえていた。グランジが主流になったが、今ではあまり見かけなくなった LA Weekly という フリーペーパーを眺め、メタル・ハードロックが演奏される日を選択して出かけた。

一番印象に残っているライブハウスは、サンセットストリップの一番西側にあった “ギャザリーズ” だ。”ギャザリーズ”に入ったのは1991年で、演奏していたのは長髪で、化粧をした、コテコテのグラムメタルバンドだったが、ステージ前で立っている客は、80年代風のボディコンチックな衣装を来た二人の女性だけで、ギターの前に立ち、ギタープレイヤーだけを見ながら身体を揺すっていた。

私は後方にあった椅子に座り、演奏を眺めていたが、ベースが私に向かってアピールするようなアクションを取り、その表情から垣間見える空しさのようなものが、グラムメタルの終焉を実感したときだったような気がする。

ただ、グラムメタルが衰退し、主流がグランジに移行していたものの、サンセットストリップ自体はまだまだ活気があり、夜になると大勢の若者が繰り出していた。通り沿いにある臨時駐車場前には、駐車場へ呼び込みをする男が立ち並び、通りも車で渋滞した。私も少し離れた安い臨時駐車場に車を止め、サンセット通りを歩いてライブハウスに向かったが、その時の高揚感が癖になり、通い続けている。

ロサンゼルスには、サンセットストリップ以外にもライブハウスは存在する。90年代のグランジ全盛時に流行った代表格は アンタイクラブ / Anti-Club といえるだろう。このライブハウスはメルローズ通りのダウンタウンよりにあったが、たまたま見たバンドの演奏が、エネルギーに溢れていて、テンションが上がった。その他には、ダウンタウンの南にあった アルズバー / Al’s Bar、ハリウッドの北にあった エフエムステーション / FM Station が印象に残っている。

アルズバーはダウンタウン南の危険な臭いのする場所にあり、車を近くの路上に止め、ライブハウスに辿り着くまで酷く緊張した。中に入ると、その場末的な雰囲気は半端なく、バーカウンターとビリヤードがある部屋から演奏が行われる奥の部屋に入ると、サンセットストリップにあるライブハウスとは大きく異なる場末感。荒廃感を表わす針がピークまで振り切れ、また、訪れた時に演じていたローカルバンドは、オカルトの領域が入っていたこともあり、私の記憶に強烈なインパクトをもたらした。

ハリウッドの北にあった エフエムステーションは、店内がスタイリッシュで、ステージ前に脚の長い丸テーブルと椅子が並び、座りながら演奏を見ることができた。演奏の間は、天井からスクリーンが下りてきて、ビデオを流していた。当時、このようなことをしていたライブハウスは見たことがなかったため、奔りだったのかもしれない。店自体、少しスノッブな感じはしたが、楽しめる作りの場所だった。

サンセットストリップの南、サンタモニカ通り沿いにある トルバドール / Troubadourも老舗と言えるだろう。ここは少し箱が大きいが、二階にある座席が、見世物小屋の観客席的な雰囲気があり、PA のスペースで調整をしている人を横目で見ながら下に見える演奏を見るのがお勧めである。

ウィスキー・ア・ゴーゴーは今も昔も変わらない。一方で、ロキシーは随分変わってしまった気がする。内装も昔はテーブルが並び、好きな場所に座れ、カクテルウェイトレスがオーダーを取りに来てくれたが、ずいぶん前に内装が変わってしまい、テーブルが取り払われてしまった。そもそも、最近、ロック系はほとんど演奏されていないため、10年以上足を運んでいないがー。

これとは対照的に バイパールーム / The Viper Room は、開店以降、セレブが足を運ぶような感じの場所で、ロック系は少なかったが、最近はロック系が大勢のようだ。このライブハウスは作りが変わっていて、隣にある、アルコールショップを曲がった脇道に入口がある。入口を入ると建物の地下一階という造り。受付を通ると、階段を上ってメインステージに行くようにできている。

ちなみに、メインステージ脇の壁の外はサンセット通りで、サンセット通りの建物の前に立っていれば、演奏は聞こえてしまう。また、この壁の外の場所は、1993 年にリバーフェニックスがオーバードーズで倒れた場所とされており、写真を撮る人、壁に落書きをする人がいたが、現在ではそういう光景もあまり見かけなくなった。

尚、私は訪れることができなかったが、73年から81年には、サンセットストリップの南、サンタモニカ通り沿いにスターウッド / Starwood というライブハウスがあり、80年代に成功した多くのバンドが演奏をし、愛され、ロサンゼルスのロック文化形成に重要な役割を果たしている。

List of Rock Club in Los Angeles

■ Whisky a Go Go:West Hollywood, CA
 The Roxy:West Hollywood, CA
■ The Viper Room:West Hollywood, CA
■ Gazzarri’s : West Hollywood, CA(閉店)
■ Troubadour: West Hollywood, CA
■ Anti Club : Los Angeles, CA(閉店)
■ Al’s Bar : Los Angeles, CA(閉店)
■ FM Station ; Los Angeles, CA(閉店)

(described on Dec 30 2018)
(latest update on Jan 11 2020)

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