ニューメキシコ州、先住民居留区のゲートシティ、ギャラップ。ルート66沿いを店の看板と佇まいを眺めながら歩いていると、強風によって土煙が舞い上がる光景が目の前で繰り広げられ、感情が揺さぶられる。
アメリカニューメキシコ州、インターステート40号線沿いにある街、町でもいいかもしれないが、人口は20,000人以上ということなので、街でいいだろう。街の中心に40号線と並行してルート66が走っている。
ニューメキシコ州と東のアリゾナ州には、多くの先住民地域がある。名前が知られているところを挙げると、ナバホ、ズニ、アパッチ。この場所は、周辺の先住民居留区のゲートシティー的な役割を担っている。従い、先住民文化を感じることができる街という意味で、独特な雰囲気を持った場所だ。
最初の訪問は1994年。ナバホ先住民居留区をアリゾナ州にあるテューバシティー/Tuba Cityから始まる246号線を東に向かって走り抜け、このギャラップに到着した。ナバホのエリア内はほとんどが荒野だが、道路沿いに現れる町にはローカルの人がヒッチハイクをする姿が見られ、今まで見たことがない雰囲気を体感し、ギャラップに到着。ルート66沿いに並ぶ店を眺めながら歩き、目に留まった歴史を感じさせるカフェに入り、この町の素朴な雰囲気に魅了された。
その後1998年にも立ち寄り、今度来た時は、ルート66沿いに建つエル・ランチョ・ホテル/El Rancho Hotelに必ず宿泊しようと思っていたところ30年近くが過ってしまった。
ここでは、2024年に訪れた際に、気に入った場所について記述しておきたい。先住民地域は、日常生活を体感できるスポットが限定される側面もあるので、この街は貴重な場所だと思う。是非、立ち寄っていただきたい。
El Ranchoホテル
街の中央を東西に走るルート66沿いにあるホテル。ルート66を紹介する時、必ず紹介されるホテルだ。レトロな建物は、豪華なエントランスが目を引く。エントランスの上には「Hotel El Rancho」と書かれたサインがあり、夜はネオンで彩られる。
このホテルは、1937年オープン。映画ロケで使用されるホテルとして始まり、1940年から50年代のハリウッド隆盛時によく使われた。ギャロップ周辺は天候が良く、雨が少ないことが映画ロケ地に適しており、このホテルが必要とされたようだ。
ホテルは三階建て。正面から中に入ると、二階まで吹き抜けの豪華なロビー。レセプションは右手。ロビーの中央には吹き抜けの二階に上る階段が左右にある。階段を上った二階吹き抜けのバルコニーエリアの壁には、昔のハリウッド俳優の写真が並んでいる。歴史を感じさせる素晴らしい空間だ。壁際にはレトロな椅子が並んでいる。椅子に座りコーヒーを啜る。贅沢な時間だ。
宿泊した時の部屋は三階の通り沿いで広かった。ツインルームだったが40m2程度。天井にはファンが回り、シックな家具が置かれている。寛げる空間だ(ただし、水廻りは期待しない方がいい)。
一階の入口を入った右手奥にはレストランとバー。レトロな感じの空間で、メキシコ料理を堪能していただきたい。入口右手には、スーベニアショップがあるが、充実した品揃え。ルート66沿いの中心には店が並んでいるが、スーベニアショップに特化したような店はないので、この場所で購入するのがいいだろう。
尚、ホテルの敷地内には二つの建物がある。一つが本館で、その横に普通のモーテルのような建物(アネックス)がある。私が宿泊した時は、「予約は横にあるアネックスですが、本館にアップグレードしてもいいですよ」と言われ、本館の3階にしてくれた。予約時は、本館/アネックスの指定はできなかったが、本館横のアネックスは普通のモーテルにしか見えなかったので、必ず本館に泊まっていただきたい(予約時に本館をリクエストしておくべきだろう)。
Flea Market(フリーマーケット/蚤の市)
街の中心の少し西側にある9th通りで行われているフリーマーケット(蚤の市)。先住民の人々による運営。毎週土曜日に行われている。インターステート40号を降り、9th通りを北上すると右手に見えてくる。道路沿いに多くの車が見える。
マーケットは、乾いた土の広大な敷地に縦に二列の通路ができていて、その横に屋台が並んでいる。一周したが、一列の長さは500m程度あった。一周すると1kmという感じ。アクセサリー、DVD、Tシャツ、布系、オブジェ、ドリンクの店が多い。
基本的には、ローカルの人々のためのマーケットなので観光客らしき人の姿は少ない。ギャラップの中心街でも人が集まる場所は限られているので、この場所で、先住民パワーを感じていただきたい。
ルート66沿いのアクセサリーショップ
ルート66沿い、1stから3rdストリートが交差するところにTrader Post、アクセサリーショップが集中している。先住民の人が制作するジュエリーが有名。青色、緑色のトルコ石(Turquoise)を使用したアクセサリーを見たことがあるのではないだろうか。
この場所には10軒程度の店が並んでいる。5軒程の店内に入ったが、緩い感じ。店員もPushyな感じはしない。中には、リテイナー(Retainer)のための特別な購入エリアを設けている店もある。値札はあるものとないものがあるように見えたが、時間差で二度訪問し、違う店員に同じアクセサリーの値段を訊いたら、安くなっていたりするのが面白い。
アクセサリーを購入する時に店員の方と少し話をする。
「日本人は来ますか?」
「たくさん来るよ」
「そうなんですね」
「あなたはどこから来たの?」
「東京です」
「ああ、東京ね。大阪からたくさん買いにくるよ」
「そうなんですか」
「ちなみに、日本から今まで何人くらい買い出しに来ていますか?」
「そうだねえ、数えたことはないけれど、50人は来ているねえ」
個人的には、東京でジュエリーを販売している店を知っていて、「このギャロップに買い付けに来るんです」という話を聞いたことがあるが、この手の商売の話をすると、いろんなところで、「東京」ではなく「大阪」のことを耳にする。勝手な推測だが、片言の英語と日本語で、値段交渉をする姿が目に浮かんでしまう。商売の観点での知名度は、「東京」よりも「大阪」の方が上のようだ。
壁画
ダウンタウンを徘徊していると、壁画(Mural)が目に付く。20ヶ所程度。ホテルにダウンタウンにある壁画のマップがあり徘徊したが、中米メキシコの影響を受けた鮮やかな色遣いが見れるので歩いてみて欲しい。
Jerry’s Cafe
ダウンタウンにはそれなりに店が並んでいるが、食事ができるところは限られている。昼食時にダウンタウンを徘徊した際に、店の前に人が集まっているカフェがあり中に入る。昔ながらのボックス席が並び、ローカルの人で満員の店内は、懐かしい感じがするいい雰囲気だった。テーブルは全部で16ケ。7人の店員が、店内を忙しなく行き来していた。尚、1998年訪問時の写真を眺めていたら、このカフェの写真を発見した。ホームページをみると1976年オープンとのことだ。
ルート66について
ルート66を象徴する景色に、昔ながらのモーテルとモーテルの看板、夜のネオンが挙げられる。最初の訪問は1994年、30年後の2024年の訪問時に通りを走っていた印象は、昔ながらの古いモーテルはほとんどなくなっているか、営業しておらず、建物だけがあるという状況だったことだ。夜中に、ルート66沿いの建物が発するネオンを期待して東西を一通り走ったが、El Ranchoホテル以外には目立ったネオンは確認できなかった。
昔ながらの平屋建てのモーテルは、El Ranchoホテル前の道路の向かいを少し東にずれたところに3軒あったが、いずれも営業はしていなかった。アメリカのモーテルは、1950年代頃が最盛期と言われているが、その時代に建てられたとすると、既に50年以上が経過していることとなり、老朽化が激しく、営業は難しいのだろう。
最後に
ダウンタウンのルート66沿いの店が並んだ通りにも人の姿はまばらだ。ガヤガヤした感じはしない。ルート66沿いを店の看板と佇まいを眺めながら歩いていると、何とも言えない懐かしい気分に覆われる。立ち止まってルート66に視線を移すと、強風によって土煙が舞い上がる光景が目の前で繰り広げられ、感情が揺さぶられる。
是非、メディアで目にするアメリカとは違うアメリカを体感しにこの場所を訪れていただきたい。
1994年、1998年、2024年訪問
基本情報
■ 名称:ギャロップ / Gallup
■ 住所 : Gallup, New Mexico, USA
■ ホームページ:https://www.gallupnm.gov/
(described on Nov 10 2024)