青森県、青森市。白で統一された空間に足を踏み入れ地下に降りると、広大なスペースにシャガールが現れ、充実感に包まれる。
青森県青森市にある現代系作品を中心とした美術館。青森県十和田市にある十和田市現代美術館と双璧をなす青森県、いや日本を代表する現代美術館の一つと言えるだろう。青森市中心街から車で15分程の場所にある美術館は広大な敷地に立つ真っ白な建物。建物の前は広大な芝生の広場で、凧あげをしている人がいたりする長閑な場所だ。
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この美術館の特徴を際立たせているのは色だ。白と茶色。館内の床、壁、天井、すべてこの二色のどちらかで構成されている。建物の外壁はすべて白。徹底している。白は、雪をイメージ、茶は土をイメージしているということだ。ちなみに、館内にあるトイレは白で統一されていた。
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また、この美術館は、魅力ある現代美術館の必要条件の一つである館内の構造が分かりにくいという条件を満たしている。正面入口を入りチケットを購入すると、エレベーターに乗って地下二階に降りる。そこが展示スペースという構造。
最初にアレコホールという、都会の美術館ではありえないスペースがある。縦・横・高さそれぞれ20メートルほどある空間は、四方の壁に巨大作品が展示できるスタイルになっており、シャガールの作品が展示されていた。シャガールが好きな人にはたまらない空間だろう。展示スペースは地下二階と地下一階にあるが、行き来する階段は白い空間。エスカレーターを配置していないのも、この色の効果を狙っているのだと想像する。
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地下二階、アレコホールの奥には青森県出身の作家、奈良美智の作品が展示されたスペースがある。スペースの一番奥からは、ガラス越しに「あおもり犬」というタイトルの巨大な犬の彫刻作品が見える。この美術館を代表する作品だ。この奈良美智の一連の作品群を見ていると、この作家の存在がこの美術館を建設した一つの切っ掛けになったのではないかという気がしてしまう。作家としてこれほど幸せなことはないのではないだろうか。
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私が訪れた時には、地下一階の細長い展示スペースに「寺山修二」が上演した演劇作品のポスターが展示されていた。このアングラ演劇を代表する作家も青森県出身ということだ。また、作品展示はなかったが、ショップに「消しゴム版画家」として名を馳せた「ナンシー関」に関するアイテムが並んでいた。彼女も青森県出身ということだ。
冒頭にも記載の通り館内の構造が分かりにくい。常設展と企画展の部屋が入り混じっていることもあるが、一通り歩いて理解したのは、展示室が地下にあり一階/地上階と地下一階の間に訪問者が行き交う階段がないことだ。意図して設計したのかはわからないが、この点が、この美術館に面白みを加えているのかもしれない。
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尚、美術館の正面入口をカフェとミュージアムショップの方に向かい、階下に向かう階段を下りると、「六角堂」という建造物があり、その中に奈良美智の作品が展示されている。この「六角堂」と上述の「あおもり犬」は、美術館に入らず鑑賞できる。特に「六角堂」は見逃してしまう人が多いと思うので、忘れずに足を運んでいただきたい。
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冒頭に触れた通り、青森県には、この青森県立美術館以外にも十和田市現代美術館という素晴らしい美術館がある。この二つの美術館をセットにして回ると、日本の現代美術の素晴らしさを再認識できるのではないかと思う。是非、訪れていただきたい。
2021年訪問
基本情報
■ 名称:青森県立美術館
■ 住所 : 青森県青森市安田近野185
■ ホームページ:https://www.aomori-museum.jp/
(described on Jun 17 2023)